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「英語で味わうシャーロック・ホームズ」事前質問 回答集

3月25日に行われました『シャーロック・ホームズで学ぶ英文法』の刊行記念トークイベントでは、時間の都合上、事前にいただいたご質問のすべてにご回答することができませんでした。

当日扱えなかったご質問のうち、ぜひみなさまにシェアさせていただきたいものにつきまして、著者の柴田元幸先生西村義樹先生に回答していただきました。
(本書の著者・編集者である森田修が回答させていただいている質問もございます。)

イベントの様子については、こちらの #イベントレポ をご覧ください。

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Q. シャーロックホームズの物語のどんな部分に1番魅力を感じますか?

西村先生:
魅力はありすぎて困るほどなのですが、1番はやはり(その特異な能力も含めた)ホームズのパーソナリティーでしょうか。と言っても、ワトソンとの関係があるからこそホームズのパーソナリティーも顕在化するので、この二人のユニークな関係もホームズものの魅力の源として不可欠だと思います。

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Q. 私は昨年、受験生以来10年以上ぶりに英語学習を始めました。もともと探偵モノが大好きで、いつかシャーロック・ホームズを原書で読むことが夢です。そのためには、語彙・文法・英文解釈などの参考書をどのレベルまでマスターするのが望ましいでしょうか? いわゆる難関大向けや、英検1級向けのテキストをこなせるようにならなければいけないでしょうか?今後の学習の進め方の参考にしたいので、教えていただけると幸いです。

森田:
英検1級の教材は、語彙的な部分をカバーするのに大いに役立つと思います。文法的な部分に関しては、特に英検の問題集をやり込む必要はないと思います。それよりも、例えば『英文法解説』(金子書房)など、体系的な文法書をある程度読み込んだりするといいと思います。また、入試向けの教材ですと、『英文解釈教室』(研究社)などの、上級者向けの英文解釈参考書を解くと、原書精読の力が養成されると思います。

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Q. 柴田先生に質問です。いろいろなイベントで大活躍され、また本もいっぱい出版され(このため「すごい元気なおじいちゃん」を想像していたら、「かっこいい上司」的な方で驚きました)、一体いつ寝てるのでしょうか…。あまり関係のない質問ですみません。

柴田先生:
「かっこいい」と言っていただいて感激です。夜は普通に寝ています。目標は11時~5時、現実はだいたい12時~6時。15分の昼寝を1、2回します。短い昼寝の方が効果的だと新聞で読んだので。

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Q. 翻訳学習者です。留学経験がほとんどありません。欧米の人の考え方などが分かるために知っておくべきこと(宗教、歴史、文化など)と、そのヒントになるお勧めの本や映画などがあれば教えてください。

西村先生:
これも思いつくものを挙げ始めるときりがないのですが、最近読んだもので言えば、長年NHKの英語講座を担当されていた杉田敏先生の『英語の新常識』(集英社インターナショナル)がお勧めです。同じく杉田先生の『NHKラジオ 実践ビジネス英語 現代アメリカを読み解く』(DHC)を読む辞書として活用されるのもよいと思います。(私は通読して大いに勉強になりました。)杉田先生のお書きになるものには、私のようにビジネスに直接関係のない読者にとっても、英語と英語文化圏についての有益かつ正確な情報が満載されています。

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Q. 一番難しかった箇所、一番楽しかった箇所はどこですか?

森田:
難しかったところは、正直、それほどなかったと思います。オー・ヘンリーの作品は「調べてもどうしてもわからない」という箇所が結構ありましたが、ホームズの場合は、資料も豊富にありますし、奇をてらった表現や、当時でしか通用しない口語表現などはほとんど出てこない印象です。いわゆる「破格」になっている部分もそれほどありませんでした。
楽しかったところは、「強調構文」がたくさん出てきたり、トークイベントでも言及した「修辞疑問文」が使われているなど、「文法的に解説のし甲斐があるところ」が豊富に見つかったという点です。

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Q. 短篇から入ったからでしょうか、『緋色の研究』や『四つの署名』、『恐怖の谷』の後半部分の来し方篇が苦手です。「こういうところがおもしろいんだよ」ですとか「こういう視点があるといい」というようなことがありましたらお教え願えませんでしょうか。

西村先生:
実は私もこの3つの長編の構成はあまり得意ではありません。長編では『バスカヴィル家の犬』が1番好きなのもそれと無関係ではないかもしれません。というわけなので、「こういうところがおもしろいんだよ」とか「こういう視点があるといい」とは申し上げられないのですが、特に『恐怖の谷』の第二部は独立した話としても十分面白い内容なので、そういう話として読んでみることはお勧めできます。

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Q. ホームズは、ドラマや映画がたくさんありますが(今も、懐かしいジェレミー・ブレット版がNHKで放送中ですよね!)、柴田先生と西村先生の好きな映像作品はありますか?

柴田先生:
お恥ずかしいことに映像作品は全然観ていません。本の「はじめに」にも書きましたが、もはや失われた、1908年公開の、ホームズがトランス状態に入って真犯人(ゴリラ)を「発見」する映画 Sherlock Holmes in the Great Murder Mystery がいつの日か発掘されることを夢見ています。ちなみにhttps://www.imdb.com/title/tt0299137/に詳しい映画評が載っていますが、たぶん捏造だと思います。古い映画についてよくあることだと聞きます。

西村先生:
私も映像作品はそれほど観ていないのですが、ジェレミー・ブレット版はやはり別格だと思います。初めて観た時に「この人こそが理想のホームズ役者だ」と感じたのを鮮明に記憶しています。私はホームズと同じくらい刑事コロンボが好きなのですが、コロンボ役のピーター・フォーク(Peter Falk)の小池朝雄による吹き替えと同じく、ジェレミー・ブレット版ホームズの露口茂による吹き替えは最高だと思います。(「太陽にほえろ」の山さんが好きだったことも関係しているかもしれませんが。)もちろんジェレミー・ブレットの声も「これこそホームズ!」という感じなので、もしまだ視聴されていなければ英語版もお勧めです。

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Q. 先生方は英語の小説を読む際には辞書を用いて読んだりしていますか? 自分で洋書を読もうとすると、どうしてもわからない表現が気になってしまい、なかなか先に読み進めることができません。小説を読むときのポイントを教えて欲しいです。また、小説などは高度な英語力がないと完全に理解して読み進めるのは難しいと感じています。先生方は「小説を読めた」と感じたときはどのタイミングでしょうか?  最初、小説などをどのように英語学習素材として読み進めていきましたか?  先生方の英語学習歴も教えて欲しいです。

柴田先生:
辞書を使うかどうかは状況次第(本の難易度、何のために読むか、どこで読んでいるか等々)ですが、まあやっぱり手放せないです。
小説を読むときのポイントを規定するのは、ラーメンを食べる時のポイントと同じくらい難しいと思います(チャーシューはどの時点で食べるべきか?)。
小説を「完全に理解」するということは、たとえ母語で読もうともないと思います。
「小説を読めた」と思ったことはいまだにないです。いつまで経っても、自分にはよくわからないもの、です。
特に学習のために小説を読んだことはありません。高校の時に熟読した『四訂版 英文解釈問題集』(培風館)でも小説からの課題文はたしかに好きでしたが。

西村先生:
私は(日本語でもそうですが)英語で書かれた小説をあまり読んではいないのですが、例えばホームズものを読むときには今でもよく辞書を使っていて、そうすることによって内容の理解が深まったと感じることがあるのは間違いありません。私は英語で書かれた言語学の著作を読む時も英語のニュースを聴く時も辞書、特にオンラインの英々辞典を(おそらく大多数の同業者よりも)頻繁に使っています。そうしないと内容を正確に理解することができないと考えているからです。英語の勉強の素材として小説や論文を読んだりニュースを聴いたりするだけではなく、表現された内容をより深く正確に理解するために(辞書や文法書を使うことも含めて)英語に取り組むという姿勢が重要だと思います。

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Q. 彼らはいわゆるキングス・イングリッシュを話していたのか、昔から気になっています。

西村先生:
そういうことの専門家ではないので正しいことを言っている自信はありませんが、特にワトソンは当時の典型的な教育のあるイギリス人の話す英語を使っているのではないかと思います。ホームズは、柴田先生が『シャーロック・ホームズで学ぶ英文法』で指摘されているように、独特の言い回しを使うこともありますが、それでもホームズものが当時のイギリス人読者にあれほど支持されたのは、ホームズのようなイギリス人はあのように話すにちがいないと感じられたからではないでしょうか。

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Q. 飽きっぽい性格なのですが、洋書を読み続けるコツを教えてほしいです。文法嫌いで、なんとなくで意味を理解しているので、登場人物が多くなると、内容理解が追いつかず、途中で嫌になってしまいます。

森田:
映画化されている作品に関しては、先に映画を見てから読むというのもありだと思います。登場人物に関しては、ノートを作って、人物関係を整理してから読み進めるのが効果的です。無理に急いで読もうとする必要はないと思います。自分のペースでゆっくり楽しめばいいと思います。文法的にわからないところは、HiNativeというウェブサイトで、母語話者に質問してみることをおすすめします。

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Q. 「大学入試で、本当はこんな出題をしたい!」というような英文や出題形式はありますか?

西村先生:
私が毎日読んでいるRonald W. Langacker(Cognitive Grammarの創始者)やMichael Tomasello(Origins of Human Communication, Becoming Humanなどの著者)の緻密でありながら潤いのある文章からある程度の長さとまとまりのある一節を選び、下線部訳の問題を出題してみたいです。

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Q. いままで出会った日本人の中で、最も英語ができる(読める、書ける)と感じた方はどなたですか?

柴田先生:
「日本人」をどう定義するかによりますね……「日本語が母語」ということであれば(これも「母語」をどう定義するかによりますが)カズオ・イシグロだってそうと言えるかもしれないし。でもまあ普通は母語+人種(これも雑な概念ですが……)+国籍でしょうか。だとすれば堀内克明(『最新英語情報辞典』)、小西友七(『英語前置詞活用辞典』)といった辞書製作者たち。

西村先生:
柴田元幸先生がそういう日本人であることは間違いありません。さきほどお勧めした本の著者である杉田敏先生もそうです。直接教えを受けたことはありませんが、大学生のときにラジオの英会話番組でインタヴューを受けていた山内久明先生も私にとってはそういう日本人です。他にも何人か思いついたのですが、もう一人だけ挙げるとすると、駒場で同僚だったエリス俊子先生です。強調しておきたいのは、この人たちが母語である日本語の能力においても傑出していることです。

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Q. 多和田葉子さんのドイツ語のように、英語で創作活動をする日本人がいてもよいと思うのですが、なぜそういう人が出てきていないのだと思われますか?

柴田先生:
出てきていると思います。すぐ思いつくのはKyoko Yoshida(吉田恭子)です。

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Q. アメリカ英語とイギリス英語の文法上の違いを詳しく解説しているような学習書をご存じでしたら教えてください。

西村先生:
残念ながら、そういう学習書は知りません。アメリカ英語とイギリス英語は確かに文法的に異なる点がいくつかありますが、いずれもコミュニケーションに支障をきたすような相違点ではないと思います。『シャーロック・ホームズで学ぶ英文法』で森田さんが指摘しているような相違点を一つ一つ学んでいくことをお勧めします。

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以上、イベントの事前質問とその回答でした。
質問をお寄せくださったみなさま、イベントへご参加くださったみなさま、ありがとうございました。

引き続き、同様のイベントを企画していく予定ですので、ぜひ弊社のSNS等をフォローして最新情報をGETしてください!!


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