アーネスト・トンプソン・シートンとは何者なのか。
『シートン動物記で学ぶ英文法』がいよいよ発売です!!
「文学で学ぶ英文法」シリーズの第6弾として、越前敏弥先生と、倉林秀男先生にご執筆いただきました。
本書の中では、シートン動物記の中でも人気のある「オオカミ王ロボ」の全文を取り上げています。
「シートン動物記」といえば「ファーブル昆虫記」と並んで、小学校の図書室で人気の児童書、というイメージが強い人もいるかもしれません。
しかし、「シートン動物記」は児童文学では決してありません。それは、実際の英語を読んで実感してもらうとして…
今回は、作者であるアーネスト・トンプソン・シートンがどのような人であったのかを簡単に紹介したいと思います。
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シートンの顔
まず、シートンは博物学者だと言えます。博物学とは、自然に存在するものについて研究する学問で、英語ではnatural historyといいます。
自然界の動物を徹底的に調査・記録し、「自然を学んで」いたシートンは、まさに博物学者でありました。
また、博物学の功績を物語として残したという点で、作家であるとも言えるでしょう。『シートン動物記で学ぶ英文法』に収載している「オオカミ王ロボ」のほかにも、多くの動物物語を書いています。
さらには、作品の挿絵をシートン自身が描いているということから、画家であるとも言えます。シートンは、オンタリオ美術学校やロイヤル・アカデミー絵画彫刻学校で学んでいたため、芸術にも造詣も深かったのです。
博物学者であり、作家であり、画家である、というように、シートンは多くの顔を持っていました。
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博物学者になるまで
1860年にイギリスのサウスシールズで生まれたシートンは、5歳の時にカナダのオンタリオに移住します。そこで大自然に触れて暮らしたことが、のちに博物学者になるきっかけになったとも言われています。高校卒業後、博物学者を志しましたが、父の反対もあってオンタリオ美術学校に通いました。そこではメダルも授与されるなど、優秀な成績で卒業したようです。
その後、ロンドンにあるロイヤル・アカデミー絵画彫刻学校に入学しましたが、劣悪な生活環境などが要因で体調を崩し、1年足らずでカナダに戻りました。ただ、このロンドン滞在中には、大英博物館付属図書館で博物学の本と出会うなど、ナチュラリストへの想いを再燃させる出来事もあったと言われています。
カナダへの帰国後は、マニトバ州で農場をつくっていた兄のもとへ行きます。親友の父であり、自然史の師匠であるWilliam Brodie博士から、興味を持ったことはすべて記録するようにアドバイスをもらいます。開拓者としてではなく、博物学者としての生活が始まったのです。
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ニューヨーク、そしてパリへ
絵で生活していくために、23歳の時にニューヨークに移り、そこで多くの学者や芸術家、作家などと出会います。Century Dictionaryのために1000枚もの哺乳類の挿絵を描くなど、野生動物画家としての地位を確立しました。
30歳のとき、芸術家になるべくパリへ旅立ちます。“The Sleeping Wolf”という絵がパリ・サロンで入選し、一躍有名になります。1893年のシカゴ万国博覧会では、マニトバ州の自然史展示物を製作した報酬として、マニトバ州政府の公式博物学者に任命されました。
しかし、解剖学の本を作成中に目を酷使しすぎたために、医師から目を休めるように指示されました。そこで再びアメリカに戻ることになるのです。
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オオカミ王ロボとの出会い
ニューヨークに戻る船中、ニューメキシコ州に出没する賢いオオカミ、ロボの話を聞きます。翌年、シートンはロボを退治してほしいとの依頼を受けてニューメキシコに向かいます。
この賢いオオカミ、ロボについてのストーリーをまとめた作品が本書で扱っている "Lobo, the King of Currumpaw"(オオカミ王ロボ)なのです。
ロボとの出会いは、シートンのその後の人生を変えることになったのですが……ここから先の話は、『シートン動物記で学ぶ英文法』で原文と越前敏弥先生の翻訳をお楽しみください。
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シートン動物記
「オオカミ王ロボ」と、その他の物語を合わせた "Wild Animals I have Known"(わたしが知っている野生動物)が大ヒットし、全米各地でシートンの名が知れ渡り、講演なども行うようになります。
この『Wild Animals I have Known』を始めとする動物物語の55編が日本では「シートン動物記」と呼ばれています。
しかし、このタイトルは1930年代に日本で翻訳版が出版された際につけられたものであり、シートンがつけた原題ではないそう。
数ある動物記をまとめて「シートン動物記」と呼んでいるのは、日本だけなのですね。
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その他の活動
シートンは、コネチカット州でエコロジーと自然主義を理想とするウッドクラフト・インディアンズを設立しました。これが、後のボーイスカウト運動のきっかけとなりました。
70歳の時には、2500エーカーの土地を買い、The Seton Institute College of Indian Wisdomを設立してウッドクラフトの指導者育成に力を入れました。
他にも、北極平原にカヌーの旅に出かけたり、北米インディアンの研究を行ったり、鳥類保護の法律施行に尽力するなどしています。
生涯にわたって、野生動物や先住民族に関する本などを多く出版していましたが、1946年に86歳で亡くなりました。
75年以上経った今でも、世界中でシートンの作品が愛され、自然科学の分野に残した功績が称えられています。
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いかがでしたか?
シートンがどんな人であったかを知って、『シートン動物記で学ぶ英文法』を一層お楽しみいただければと思います。
参考サイト
・シートン協会
・Ernest Thompson Seton Institute
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