子どもの幸せ①(成長意欲)ほめ方のポイント
ウサギ仙人(ウ仙)から幸せの4要素のうちの「成長意欲」についての関わり方を教えてもらった亀子であったが、
ウ仙「実は成長意欲に関して、もう少し話したいことがあるんじゃが。」
亀子「ぜひ続けてください」
ウ仙「おぬしはベトナムとかフィリピンとかに行ったことはあるか?」
亀子「ヨーロッパやアメリカは行ったことあるのですが、東南アジア系はないんですよ。近くだと韓国くらいですかね」
ウ仙「ではベトナムでは『ホビロン』、フィリピンでは『バロット』と呼ばれる食べ物は知っておるかの?」
亀子「実は私『美味しんぼ』が大好きで、ホビロンは出てきました。孵りかけのアヒルの卵ですよね?見た目はゆで卵みたいと書いてありました」
ウ仙「よく知っておるの」
亀子「でも私は実物があっても食べれませんよ」
ウ仙「いや食べろという話ではなくてな。最近、知り合いのベトナム人がホビロンを部屋にほったらかしにしておいたら、卵が孵ってしまったそうじゃと聞いてな」
亀子「アヒルの雛が生まれたんですか?」
ウ仙「そうなんじゃ」
亀子「アヒルの雛だったら、かわいいじゃないですか」
ウ仙「今回はひとりでに卵が孵ってしまったらしいのじゃが、普通は親鳥に見守られて孵化をするのじゃ。これはアヒルに限らず、にわとりや他の鳥でも言えることじゃ」
亀子「親鳥に見守られてですか?」
ウ仙「雛は産まれようとするときに、卵の殻を内側から突っつくんじゃ。親鳥から見ると卵が揺れているので、『我が子が卵から産まれようとしている』と思って、それを手助けするために親鳥も卵の殻をくちばしで外から突っつくんじゃ。雛が卵を内側から突っつくことを啐(そつ)といい、親鳥が卵を外から突っつくことを啄(たく)という。啐と啄が同じタイミング(時機)に行われたときに、雛は卵から産まれ出てくる。このことを啐啄同時(そつだくどうじ)または啐啄同機(そつだくどうき)という言い方をするのじゃ」
亀子「啐啄同機は師匠と弟子での禅の教えとばかり思っていました」
ウ仙「よく知っておるのぉ。禅の教えはこの卵の孵化から来ているのじゃ」
亀子「勉強になります」
ウ仙「雛が卵から産まれる時、最終的には雛が卵の殻を破って自分の力で外へ出なければならんのじゃ」
亀子「えっ?親鳥が助けてくれるんじゃないのですか」
ウ仙「親鳥の役割はあくまで補助的なもので、最後は雛が自分の力で生まれ出ないといかん」
亀子「親鳥が卵の殻を突き破ってしまったら、どうなるんですか?」
ウ仙「生まれ出た雛は感染症にかかって、病気で死んでしまうのじゃ」
亀子「えー!!!かわいそうじゃないですか」
ウ仙「それがこの自然の厳しい掟なのじゃ。それを破ると、この世から追い出されてしまう」
亀子「自然って怖いですね」
ウ仙「かといって、殻を突き破るのを恐れて、雛が産まれようとしているのにほったらかしにするのもいかんのじゃ。過剰介入してもいかんし、ほったらかしにするのもいかん」
亀子「なんか子育てみたいな話ですね。というか卵相手だから、鳥の子育てみたいなもんですか」
ウ仙「その通り。よく気づいたのぅ。子どもの成長意欲を高めるためには、ほったらかしにしてもいかんし、過剰介入してもいかん。適度な手助けで、本人が成長するのを手助けすることが大事なんじゃ」
亀子「なるほど。今回も前置きが・・・」
ウ仙「それで話を成長意欲に戻すとな、子どもの成長意欲を適度に手助けをするには、ほめ方に工夫がいるんじゃよ」
亀子「今、流行りの『ほめて育てる』ってやつですか?」
ウ仙「いやわしは『叱らずにほめるだけで育てる』というのは反対なんじゃが、それはまた別の時に話をするとして、いずれにしても、子育てにはほめるというのは必ず必要なんじゃが、成長意欲を高めるにはポイントがあるのじゃ」
亀子「そのポイントを教えてください」
ウ仙「結果をほめるのではなくて、努力(過程)をほめるということじゃ」
亀子「努力をほめる?」
ウ仙「そうじゃ。子どもは何かができた時や達成した時に『すごいね』『よくできたね』とほめられるよりも、『よく頑張ったね』とやろうと頑張っていた姿勢についてほめられるほうが嬉しいということじゃ」
亀子「なるほど」
ウ仙「たとえばテストで100点を取った時には『すごいね』『よく取れたね』ではなく、『勉強頑張ってたもんね』『準備してたの見てたよ』と100点を取るための努力や過程をほめれば、子どもは『また頑張ろう』『次もやってみよう』という気持ちになるのじゃ」
亀子「すごいですね」
ウ仙「運動会のかけっこで1位を取った時には『やったね』『すごいじゃない』と成果を評価するよりも、『練習の甲斐があったね』『毎日走ってたもんね』と努力や過程を指摘すれば、さらなる成長意欲につながるのじゃ。子どもを幸せにすることになるじゃろ?」
亀子「意識するようにします」
ウ仙「逆に結果を評価してしまうと、親の顔色をうかがう子どもに育ってしまったり、難しいことに挑戦しない子になってしまうので、気を付けないといかんぞ」
亀子「ほめるのも簡単じゃないですね」
ウ仙「まぁ慣れれば誰でもすぐにできるようになる」
亀子「できるようになったら、ほめてくださいね」
ウ仙「過程が大事じゃぞ」
こうして亀子はレベルが上がった。
「過程や努力をほめる」という魔法を覚えた。(つづく)