『パリタクシー』 92歳の客と運転手の心温まる旅路
まるで時を経て飲み頃を迎えたワインのように、心に染み渡った一作です。
『パリタクシー』は2023年に日本で公開されたフランス映画で、クリスチャン・カリオン監督が手掛けました。フランスでは初登場新作No.1を記録し、第47回日本アカデミー賞では最優秀外国作品賞を受賞するなど、高い評価を得ています。
物語は、パリのタクシー運転手シャルルと92歳の乗客マドレーヌを中心に展開します。終活のために老人ホームに向かうマドレーヌの依頼で始まった寄り道が、彼女の波乱万丈な人生を紐解いていく旅となります。
フランスの国民的シャンソン歌手リーヌ・ルノーが演じるマドレーヌと、人気コメディアンダニー・ブーン演じるシャルルの絶妙な掛け合いが、作品に深みと魅力を与えています。
映画はほぼタクシーの車内という限られた空間で進行しますが、その中にフランスの社会や歴史、人生の機微が凝縮されています。マドレーヌの語る過去には、戦争やDVなど重いテーマも含まれます。けれど彼女の笑顔を見るとなぜか前向きな気持ちになれるのです。
パリの美しい風景や1950年代のジャズの名曲が、物語に彩りを添えています。特に"At Last"は本作のテーマと見事にマッチして心に染み渡りました。
世代を超えた2人の出会いが起こしたマジック、人生や人間関係について考えさせられる、秋の夜長にぴったりのハートウォーミングな作品です。
良質なワインのように、マドレーヌの人生がゆっくりと心に沁みてきますよ!