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愛を貫くことは、エゴになるのか。鈴木亮平×宮沢氷魚が魅せる愛の形
Amazonプライムビデオで12月10日から邦画「エゴイスト」の配信がスタートしました。
女性誌の編集者として活躍する斉藤浩輔(鈴木亮平)は、パーソナルトレーナーの中村龍太(宮沢氷魚)と出会い、心惹かれていきます。
しかし、母親の病気を抱える龍太には複雑な事情があったのです。
松永大司監督の演出は非常に印象的です。特に独特のカメラワークが話題を呼んでいます。手持ちカメラで被写体に極端に近づき、時に顔全体を映さないアングルで撮影するなど、斬新な手法で登場人物の感情を表現。これは監督のドキュメンタリー映画での経験が活かされているそうです。
本作は作家・高山真の自伝的小説が原作。残念ながら高山氏は2020年に映画化を知りながら他界されましたが、その実体験に基づく物語は深い説得力を持っています。
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撮影では、インティマシー・コレオグラファーを起用し、親密なシーンの細部まで丁寧に作り込んでいます。主演の鈴木亮平と宮沢氷魚も役作りに真摯に向き合い、リアルな演技を追求しました。
タイトルの「エゴイスト」という言葉には、単なる利己的という意味を超えた深い愛情表現が込められています。また、日本における同性カップルの現状も浮き彫りにしていて、社会派ドラマとしても見応えを感じました。
結婚という制度の存在意義が問われる現代ですが、本作は逆説的にその重要性を浮き彫りにします。同性カップルに結婚という選択肢がない日本の現状で、愛する人への支援や家族との関係が、なぜこれほどまでに複雑になってしまうのか。その答えに、観る者は静かに向き合わされるのです。
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また柄本明演じる父親の存在感も光る本作。静かな演技の中に込められた言葉の重みが、物語全体を支える重要な要素となっています。
人間の複雑な感情と愛の形を描いた本作は、間違いなくアジア映画を代表する作品の一つといえるでしょう。
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