【今週の1冊】2020年12月①『自分の価値を最大にする ハーバードの心理学講義』ブライアン・R・リトル著 児島修訳(大和書房)
自分はどんな性格の人間か?その性格は自分にとってより良い人生を生きるためにどのように活かしていけるのか?本書ではこれらのことについて、パーソナリティ心理学で有名な心理学者が科学的な視点で解説している。
巷にあふれる性格診断はほとんどがエンタメであり、基本的に科学的根拠に基づいたものはほぼない。そんな中で、本書が解説しているビッグファイブテストは、心理学的にある程度の信頼性があり、自己分析に有効な性格診断と言えるだろう。
ビッグファイブテストとは、具体的には誠実性、協調性、情緒安定性、開放性、安定性という5つの性格特性の尺度について、それぞれどの位置にいるのかを診断するものだ。また重要なのは、性格特性は「ある・ない」といった単純な話ではなく、「どの程度あるのか」という程度の問題であるということだという。
ここではその中でも誠実性について説明する。誠実性が高い人には"計画性がある"、"規律正しい"などの性格特性がみられ、低い人には"無秩序"や"自発的"などの特性がみられるという。ほかの4つについては本書の解説を読んでみてほしい。
上の説明を読んで気づいた人もいるかもしれないが、ビッグファイブテストは必ずしもスコアが高ければいいということではない。重要なのは、その性格特性が活かせる場所に身を置くことだ。
だが自分の性格がわかったとして、それに適した環境に身を置くという人生の選択肢が必ずしも自分が望んだものと一致するとは限らない。極度に内向的な人が営業職にあこがれている場合を考えてみてほしい。結果的により幸せな人生を送るためには、自分の希望をあきらめて適性に従うしかないのだろうか?
本書を読んでみると、どうやら必ずしもそうではないらしい。パーソナリティの基本的な部分は遺伝的な影響があるため大きくは変化しないものの、変えることのできる部分もあるという。社会的、あるいは個人的な動機によって、人は普段の性格からは考えられないような振る舞いもできる。ただ、やはり環境と自分のパーソナリティが一致しているときに幸福度が高まるのは事実であり、本来の性格と異なる行動を長くとりすぎると健康に悪影響が生じやすくなるという。またこれを防ぐためには、本来の性格に戻れる時間をしっかり確保することが必要というようなことも述べられている。
私は自分のことを内向的な人間だと思っていて、どちらかというとそれに対してネガティブな感情があったのだが、本書を読んで、それは必ずしもネガティブなことではなく、他の性格特性と合わせてむしろ積極的に活かしていこうと思った。
本書ではほかにも自分の性格特性を活かして幸せな人生を送るために役立つようなことが解説されている。具体例も多くわかりやすい。ビッグファイブテストをはじめ、ところどころに手軽にできる診断があり、自分についての理解を深めながら楽しく読めるのも本書の魅力だ。就活生をはじめ自己分析に役立てたい人には特におすすめの1冊である。
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