[推し本]夏の嘘(ベルンハルト・シュリンク著 松永美穂訳)
夏に読もうと積読数年、ようやく読了です。(理想的には、避暑地の湖べりで白いワンピースとか着ちゃってアイスティでも飲みながら読むはずが、、、)
ベルンハルト・シュリンクといえば、ベストセラー「朗読者」ではナチス時代のユダヤ人迫害側の傷を抱えた女性と、母子ほど歳の違う若者とのタブー的な恋愛関係から話が始まるのですが、戦後ドイツがナチ時代の犯罪にどう向き合うかセンシティブなテーマでした。しかし、どこか本当に歴史に対峙することからの「逃げ」のようなものも感じていました。
「オルガ」はやはり戦争で人生を翻弄される女性の物語で、「朗読者」とはまた違った趣がある一作です。
今回紹介した「夏の嘘」は歴史的観点とは離れて、恋人や家族につくちょっとした嘘、不実、人生の最後に気づく真実など、人の分かり合えなささを描く短編集。
で、改めてこの著者の作品に出てくる男性たちは社会的地位はあっても大体マザコンか、マザコンが歪んだ女性コンプレックスを持っているか、ゆきずりの関係はすぐ持つ割に優柔不断で、都合よく正当化するけれども最後結局「逃げ」そうという人物が多い。
「夏の嘘」でもことごとく、そういう男性が出てきて、そういう弱さを曝け出すことで何か赦しを求めるようなところが、どうなん、と思ったりもするんですよね。。