[推し本屋]本屋、はじめました(辻山良雄)/独立系書店の雄
(私の中で)杉並区に住んでいてうれしい理由の上位に入るのが「本屋Title」の存在です。
店主の辻山良雄さんは、以前リブロ池袋という1000平米規模の巨大書店の店長をされていましたが、リブロ閉店を経て個人開業に至るまでとその後一年の記録が本書です。
Titleさんに初めて伺ったのは2017年10月24日。
なぜ日にちまで覚えているかというと、「千の扉」出版記念を兼ねて柴崎友香さんと泉麻人さんの対談があるとTwitterで知り、速攻申し込んだのでした。サイン本に日付が残っています。
決して広くはない店内に椅子を並べ、ほぼ膝詰めの至近距離で拝聴。街と地理に並々ならぬ思い入れのあるお二人から縦横無尽に出てくる地名が、個人的にも何かしら縁があり、そう来たかーという所ばかりで超楽しい時間でした。
店主の辻山さんは、後方からそっと、決して出しゃばりすぎずにイベントを見守っていたと思います。
Titleさんにはそのあとちょくちょく行くようになりましたが、小さい、つまり置ける蔵書数は大型書店よりはるかに少ないはずなのに、いつ行っても何か気になる本に出会い、本に呼ばれることも多々あります。
決して個性的過ぎない(例えば絵本専門とか建築専門などではない)し、雑貨屋さん風でもない、本なんてどこの本屋でも同じものを並べてそうなものなのに他の本屋とは何かが違う・・・、何が違うのだろう、と思っていました。
その謎も本書で垣間見た、というよりも、あの小さな店に大規模書店のノウハウも、出版社と蓄積した関係も、日本各地の個人書店と紡いだ関係も凝縮されており、何より辻山さんの本屋としての底知れぬプロフェッショナリズムと哲学を垣間見てしまいました。
佇まいがいい本として置かれている書籍と同じく、辻山さんの人柄が店全体のトーンとなっていて、なぜだか変なお客さんがいないという安心感があります。
いやー、本離れと言われて久しいですが、これは簡単には真似されないビジネスモデルですよ。
※Titleとの出会いのきっかけになった柴崎友香さんが、Titleを訪問する動画
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