『いい人なのに嫌われるわけ』 作者:石川 幹人
人類史上最も長かった時代はいつか。実は、狩猟・採集がそうなのだと言う。なんと九割以上に当たるのだそうだ。当然、ヒトの脳の九割以上もこの時代に形成されたことになる。
この時代、狩猟に適する為には、個体での生活から、互いに協力する様式へと変化する必要があった。その様な集団の中では、率先して協力し、集団の利益に貢献する者が「いい人」とされた。
さて問題は、狩猟・採集時代の様な、一蓮托生で生きる小さく密な協力集団は現代にはもう存在していないということだ。
規模が大きくなり、構成している人々の種類や関係性が様々になった状態では、そんな生得的な反応のまま行動していると、或る人には良くても、他の人から見れば「いい人」には思われなくなる。
これが、現代に於ける人間関係の衝突や問題の根源であると言うのである。
なんでも教えてくれる人 → 上から目線で恩着せがましい人
みんなに対して優しい人 → 誰にでもいい顔をするはっきりしない人
理想が高い人 → 絵空事ばかりで行動が伴わない人
リーダーシップがある人 → 独りよがりで突っ走る人
本能と、数千年間で急速に発達した現代社会との間には、ズレが生じている。
このズレのことを把握して問題が起こる理由を知ること。そのズレを乗り越える対処法を知ること。
この二つを知ることを軸に捉え、本書では、「ギフトさん」、「気遣いさん」、「すごい実績さん」、「チーム孝行さん」などの、いい人なのになんだかモヤモヤする17タイプを個々に解説する。
何故ズレる?
そういうタイプとの接し方は?
自分がソレだった場合は何に気を付ければ良い?
なるほど。認知心理学、或いは進化心理学で測るとこういうことになるのか。なかなかにしてユニークな視点からの考察の数々である。
我々人類は、個が優先された時代の「サルの心」と、集団生活を基本とした狩猟・採集時代の「ヒトの心」を持ち合わせたまま、更には、多数の外集団と協働する現代に対応する為に作られたルールや仕組みを受け入れるといった「文明の心」をも携えている。
17タイプの皆さんは尚のことだが、皆が、生き辛く、抑制の効いた社会をサバイブしていかなければならないとはなんとも。
それこそモヤモヤなイキフンだ。
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