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『アダム・スミス ぼくらはいかに働き、いかに生きるべきか』 作者:木暮 太一

アダム・スミスは、1700年代に活躍し、「経済学の祖」と称されたイギリスの倫理学者・経済学者・哲学者である。

有名な著書である『国富論』に於いて、「富とは国民の労働で生産される必需品と便益品」であり、神が人間に与えた「利己心」をどんどん発揮することで、必需品、便益品が国民の間に広まり社会公益が進む、と定義したため、「利己心」を助長する人物であると評され、誤解を生んだ一面もあったらしいが、先に書かれている倫理学書『道徳感情論』を前提とすることで意味合いは変わってくる。

「規制の無い世界で自由に経済活動をすれば、見えざる手によって調整される」
と、するものの、
「適正な動機があって、適正に行動し、適正な結果が出たものが賞賛に値する。偶然の結果は褒められたものではなく、意図やその結果にいたる行動も伴っていなければ「善」とは言えない」
と、プロセスの重要性に注意を向けることにも怠らない。

「或る程度以上の豊かさでは幸福感は変化しない。また、幸福は持続しないが、上を求め続けるのは軽薄な人だ」
「自分のなかの裁判官に従う賢人として生きるか、周囲からの評価に左右される軽薄な人になるか」
「賢人は、たとえ自分に災難が降りかかっても、やがては大したことではなくなるということを理解している。そして、その時を予め見越して、最初から大したことではないと思うように努力する」
と、欲望に溺れることの無意味さを説きながら、信念を持って生き、動じることなく困難に当たるべきだと訴える。

既に今から250年以上前に、現代にも通じる様な数々の言葉を残していることに驚きを隠せない。
逆に言えば、何百年を経ても人間の本質は大した進化を果たしていないと言うことか。

さて、アダム・スミスは、本書以外の場に於いて、「幸福の条件」を三つ挙げている。
一 借金がないこと
一 良心の呵責がないこと
一 健康であること
実に人間的である。



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