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【忘れられない公演】 「八月の雹」〜突如、吹き荒れた嵐〜
↑前回の記事では【忘れられない劇団】と題した記事を書きましたが今回は
【忘れられない公演】をテーマに記事を書いていきます。
リンク記事では演劇評論家の故・村井健さんから当時、注目の劇団を教えてもらったと書きました。その中にトラッシュマスターズという今でも精力的に活動している劇団があったのですが、その劇団の主宰者である中津留章仁氏が劇団公演とは別に作・演出を手掛けた公演がありました。その公演の観劇記録をここに書き記していこうと思います。
ちなみに最初に紹介した劇団「3.14ch」を知ることができたのも中津留氏とムランティン・タランティーノ氏の両者に交友があるとツイッター上で知ることができたからですので、こういう繋がりでどんどん新しい劇団を知ることができますね。
公演名「八月の雹」
劇場「タイニイ・アリス(新宿)」※現在この劇場は閉館しております。
作・演出・中津留章仁
公演日時・2014年 8月27日〜8月31日
出演者
荻野貴継 奥山大史 木村夏子 髙橋洋介 田中里衣 柘植裕士 樋田洋平
中村美貴 西村順子 長谷川景 平山繁史 ゆかわたかし
引用元↓
トラッシュマスターズ主宰である中津留章仁が、
若い俳優との芝居作りを目指すユニットです。
無名で実力ある俳優を探すこと、
若い俳優を育成することを、主な目的としています。
今回から、中津留章仁のワークショップ「カンテラ」内で出演者を決定致します。
魂を揺さぶる作品を創り続ける中津留章仁と、
無名の若手の精鋭達で送る、
夏の抒情詩。
引用文の通り無名だけど見込みのある俳優たちと作り上げた公演というコンセプト。
場所は今な無き「タイニイ・アリス(新宿)」何度か訪れたことがある劇場であったが広い劇場ではないので前方の人には席はなく座布団を下に座ったのを覚えている。しかも上演時間が確か3時間くらいで最後はお尻が痛いというのを気にしながらの鑑賞であった 笑
ここでやはり注目するべきは舞台の上演時間が「3時間」
映画でも3時間というのは長い。当時、中津留章仁氏が書く台本はとにかく長いことで有名でした。しかし、それでもその時間を忘れさせるくらいの吸引力が確かにありました。それはたとえまだ実力的には未熟の俳優が演じていたとしても変わらず(とは言ってもそこまで悪い印象はありませんでしたが)やっぱり演劇の面白さは第一に台本がどれだけ面白いか?にかかっているのかなと感じました。
・内容
もう8年前の公演なので全体の輪郭はぼやけているのですが・・・😓
一言で言うならかなりエグい物語でした。場所は狭いアパートの一室。そこには経済的に苦しい4人家族が住んでいる。子供は男女一人ずつでまだ中学生とか高校生の年齢で(夫と子供は血が繋がっていない)夫は酒に酔っては家族に暴力を振るい問題あり。よくある設定といえば設定なのですが、その子供に血が繋がっていないゆえに娘(姉)に手を出してしまうシーンがあります。それでなくてもこの物語、開幕は暗転からの喘ぎ声と共にセックスシーンから始まり・・・しかも交際相手ではなく息子(弟)がお金を払って呼んだ女性?・・・映画だったら間違いなく15歳以上の鑑賞を推奨しますという表示が出るが、これは映画ではなくほんの数メートル先で起きている「生」である。思わず観客も目をそむけたくなったでしょうね〜💦
舞台上でここまでやるか・・・というのが感想でした。
このように性的な、しかも暴力も加わるシーンが中津留氏の台本には度々、登場する。それは同年に、この後に観たトラッシュマスターズ公演「儚みのしつらえ」にも出ており(こっちはさらにきつかった)こういうシーンが極端に苦手な人は残念ながら中津留氏の作品はオススメできないかもしれない。
それでも補足するとこの「儚みのしつらえ」は劇団本公演というだけあって「八月の雹」を上回る衝撃作であったことは付け加えておこう。こちらは俳優陣の演技にも心揺さぶられました。去年の劇団チョコレートケーキ「治天の君」につづきこの辺りに観た舞台はほんと凄かった。
で話は戻し、姉に手を出す所を目撃した弟は怒りに任せて父を包丁で刺す。その罪を母親が被ろうと決心して夫を「刺したのは私」と唱えながらさらにメッタ刺し、そこで前半は終了する・・・。記憶ではこの殺害シーンのタイミングで自宅をある人物が訪問して、玄関扉を開けた瞬間に驚きの顔をする、そして同時に外では八月の雹がザーッと降り注ぐ・・・タイトルを回収。
そう、この物語、前半と後半パートに分かれており後半からは息子が大人に成長したということで出てくる面々も含めてキャストが変わる。その転換中に暗転の中、ここから時の流れが加速するというのを知らせるナレーションが場内に音楽付きで怒涛の勢いで流れるのだがこの演出がめちゃくちゃかっこ良かったのを覚えている。
後半は家族内の悲劇から一転して政治的な問題も絡むスパイ映画みたいな展開になっており、最後は主人公の息子がなんとライフルで殺されるという振れ幅。なんで後半からそんな展開になったのかは覚えてないのだが😓前半パートの部分で伏線があり、それが後半で繋がっていくという流れだったかな〜?映像で見直せないのが舞台の悲しいところ。
他にも主人公がノートに書いたことは必ず現実になるという不思議な能力設定があったのだが、それはそこまで重要な部分ではなかった印象がある。
あぁ〜そういえば後半でも男が見たら悶絶する、女性にキン〇〇を喰いちぎられるシーンあったな〜w あれもなんであんな流れになったんだっけ(ある女性がめちゃくちゃ恨みを持っていたのは間違いない)
と、断片的ではあるが覚えていることを書き連ねただけでも普通の物語ではないことは少しはお分かりいただけたのではなかろうか?😅
ただ逆にここまでぶっ飛んでいると滑稽に見えて、観客がクスクス笑ってしまうようなシーンもありました。まさに悲劇と喜劇は紙一重です。
・出演者について
先述通り、当時は無名の俳優を起用したわけですが今、出演者の名前を見てびっくりしました。「奥山大史」さんと言えば今ではそれなりに有名な映画監督ではありませんか!
映画「僕はイエス様が嫌い」で一躍有名になって、国際的な映画賞を取った時はニュースにもなりましたよね。今は26歳ってことはこの公演の時は18歳。まだ高校生、大学生になろうとしている年齢であのきつい役を演じ切ったのはすごい。俳優活動もやっていたというのはおそらくそんな知られていない事実ではなかろうか?それこそ当時この公演を観た人や共演者などごく一部のみが知る。
そしてこの中から長谷川景さんと高橋洋介さんがのちにトラッシュマスターズの新劇団員として迎え入れられますのでこの公演を経て名前が知られるようになった人が何名かいらっしゃいます。やはり見込みある人達だったんでしょうね。
無名とはいうが、それでもしっかりと演技の勉強をしてきた人はたくさんいると思うので実力的にはそんな、全体的に知名度ある人とそこまで大きな差はないのではなかろうかというのが正直なところ。まぁ、そう思えたのも台本が面白かった、演出家がしっかりした人であったからというのも大きいと思うけど。
世の中には埋もれてしまっている良い俳優がたくさんいるな〜とは思います!
まとめ
この公演、後半はチケットが入手困難になっていたと記憶している。それだけSNSで話題になって観たい人が殺到したのだと思う。もう少し大きい劇場でやっても良かったというくらい好評で幕を閉じました。
この記事を書くにあたって、公演情報を改めて調べてみたらやはりと言うべきか、少ない印象を持ちました。実は公式ページにもすんなり辿り着けなかった。
おそらく中津留氏が見込みある若手と公演をするという企画も最近は行われていないのかな。これは本人が数年前から有名になって本格的に忙しくなったり、俳優の人数は星の数ほどいるとはいえ、なかなか都合良く素質ある若手と巡り会えないというのもあるかもしれない。定期的に行うと決めている劇団公演ではない以上できるかできないかはその時の「運」もあると思う。前の記事でも書きましたが「舞台」というのは一瞬で消えてしまう、タイミングが合わないといけない催しものですね〜。
だから自分が当時、そのタイミング良く観ることができた者しか知らないような公演の中から是非、知ってほしいものをこうして伝えているわけですが。
この中から将来、期待の若手映画監督が出てきたという意味でも記録として残しておくべき公演ではないでしょうか。まさに真夏に突如、急転して吹き荒れた嵐のような衝撃を受けた公演でした!!
余談になりますが奥山さんは演技の知識も身につけておいた方が良いと思って学生時代に演技を学んでいたのか、それとも俳優をやりたかったけど映画監督に方向転換したのか?
どちらにせよ俳優も経験しつつ映画監督や演出家、劇作家・脚本家をしている人は決して少なくありません。むしろ俳優以外のポジションもこなせる人が30代、40代になっても、長きに渡って演劇関連の活動を続けられている人は多い印象を持ちます。何度も言いますように俳優は供給過多状態ですからね。
だったら俺が、私が舞台や映画を企画してやるっていう気概を見せないとなかなか難しいということです。
もしも自分に俳優以外の才能を見出せる方はそちらにも力を入れてみてはどうでしょうか?
では最後は話が脱線しましたが以上になります。ありがとうございました。
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