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第17章 親の役割と価値観の変化

親は子どもの成長にとって最も身近で重要な存在です。しかし、現代社会において、親が子どもや教育に向き合う姿勢や価値観が大きく変化してきています。特に、「効率重視」の価値観や「他責」「免責」の傾向が、子どもたちの成長や教育に大きな影響を与えています。


教育現場で20年以上活動する中で、こうした変化を肌で感じてきました。親の考え方や行動が、子どもたちの将来を大きく左右するにもかかわらず、日常の忙しさや社会的なプレッシャーの中で、親自身が自分の役割に気づけないことも多いのではないでしょうか。


本章では、親の役割の変化とその課題を整理し、現代の子育てで大切にしたい視点と具体的なアプローチを書いたみたいと思います。




1.親の「質の変化」が子どもに与える影響

①他責志向と免責意識の拡大

長年、教育に携わる仕事を続けていると親子の関わりが、子どもの人生、幸せに大きく影響を与えると感じます。しかし、ここ10年くらいでしょうか、親が、子育てや教育において「外部」に責任を委ねる傾向が強まっているように感じます。

そのため、「学校や塾に任せれば大丈夫」という考え方がより一層高まり、昔に比べ、学校や塾が「サービス業」として見られる傾向が強まっています。これは、「家庭でやるべきこと」を軽視するケースにつながっていると言えるでしょう。


結果として、子どもの成績や問題行動があった場合に、「学校がもっとしっかり指導してほしい」「お金を払っているのだから、勉強するようにしてほしい」と要望する親が多くなっています。



子どもの課題について「学校が悪い」「社会のせいだ」とする姿勢が増えることで、家庭でできる対応やサポートが後回しになってしまいます。


例えば、宿題を忘れた子どもについて「先生がしっかり管理すべきだった」と主張するようなケースも見られます。


② コスパ・タイパ志向の育児が進む

親自身の効率重視の考え方が、子どもにも大きな影響を与えています。

▶︎「効率的な子育て」が重視されすぎる
「時間やお金をかけずに、最大限の成果を得たい」という価値観が育児にも浸透しているように感じます。例えば、オンライン教材やAIツールの利用は便利ですが、それに頼りすぎると子どもが試行錯誤する機会が失われ、根本的な思考力や忍耐力が育ちにくくなります。


▶︎親子の時間が削られる
効率性を求めるあまり、親子で一緒に過ごす「非効率」な時間が減少しています。例えば、子どもと一緒に料理やゲームをする代わりに、動画やデジタル教材に頼ってしまう場面が増えています。


③子どもへの直接的な影響

▶︎挑戦と失敗の機会が減少
効率を重視する子育ては、子どもが試行錯誤する場面を奪ってしまうことがあります。宿題でつまずいた子どもに親がすぐ答えを教えることで、「考える力」や「粘り強さ」を育む機会が失われます。


▶︎「やらされる学び」による自律性の欠如
子どもが主体的に学びに向き合う機会が減り、親や環境に依存する傾向が強まります。この結果、自分で計画し実行する力が十分に育たず、社会に出たときに必要な自律性を発揮できないリスクがあります。


2.親が気づきにくい理由

① 社会全体の効率化志向

現代の社会では、便利さや効率を追求することが当たり前となっています。この価値観の中で、「時間をかけて子どもと向き合う」ことの重要性を見落としがちです。


② 子どもの問題が「見えにくい」

学校や塾に子どもの学びを任せることで、親自身が子どもの成長過程や問題に気づく機会が減っています。家庭での生活力や学びの基盤が弱っていても、親がそれに気づくのが遅れるケースが多いのです。


③親自身の不安や過信

一部の親は「自分の育て方が間違っているかも」という不安を抱える一方、「自分は普通に育ったから問題ない」という過信も見られます。このアンバランスが、子どもの成長環境への注意不足につながることがあります。


3.本質を取り戻すためのアプローチ

① 非効率の価値を再発見する

親子で一緒に時間をかけて取り組む活動を増やしましょう。料理や工作、庭の手入れなど、目に見えた成果をすぐに求めない活動が、子どもの忍耐力や達成感を育てます。


②長期的な視点を持つ

教育や子育ては短期的な成果を求めるものではありません。「すぐに結果が出なくても大丈夫」という心の余裕を持つことで、子どもが安心して成長できる環境が生まれます。


③ 親子の対話を増やす

子どもの考えや感情を引き出す質問を意識してみましょう。例えば、「今日楽しかったことは何?」「どうしてそれを選んだの?」といったシンプルな問いかけが、子どもの自発性や親子の信頼関係を深めるきっかけになります。


④ 親自身が学び直す

時代や子どもたちの状況に合わせて、親も学び直す姿勢が求められます。「どんな教育が子どもの成長に必要か」を考え、必要に応じて専門家の意見や情報を取り入れましょう。


4.まとめ

現代の子育てでは、効率や便利さが重視されるあまり、手間をかける大切さが忘れられがちです。しかし、あえて「非効率」を楽しむことで、親子の絆が深まり、子どもは困難を乗り越える力や社会で必要な力を育むことができます。


親の価値観が変われば、子どもの未来も変わります。本質を見直し、「本当に大切なこと」に目を向けた子育てを、一緒に広めていきましょう。




朝ジュクの管理人

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