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私たちのターニングポイント From社内報 #5「大きな夢を描き、自分と未来を変えていく」

本記事では、アサヒ飲料社内報コンテンツとして制作している「ターニングポイント」を一部編集してお送りいたします。「ターニングポイント」では当社役員・事業場長の転機となった経験に迫り、人生や仕事の軸となっていることを紹介しています。社員から人気が高い「ターニングポイント」を通して、当社の歩みを少しでもお伝えできればうれしいです。

今回は「炭酸飲料無菌充填システム(※)」の実現に取り組んだ社員のターニングポイントです。

※炭酸飲料無菌充填システム(「フルーツクオリティ製法」):殺菌した中身液を事前に殺菌した容器(ボトル・キャップ)に、空気中のチリや微生物のないクリーンな空間で充填することで、キャップを締めた後の加熱殺菌工程を省くことを実現。このシステムを使わない場合は中味液を充填した後に加熱殺菌が必要となるので、耐熱や耐熱圧などのPETボトルを使用しなければならない。

参考:https://www.asahiinryo.co.jp/rd/research/flavour.html

※本記事は2022年8月に社内報として執筆した内容です。


【プロフィール】

安部 寛(あべ ひろし)/取締役 兼 執行役員 研究開発本部長
1989年アサヒビール入社。飲料食品研究所にて、炭酸・健康飲料の開発を担当。1992年明石工場製造部、1995年飲料研究所、技術開発課で次世代無菌充填システムの開発に携わる。2001年生産技術部、生産プロジェクトグループリーダー兼技術部課長として炭酸飲料無菌充填システムの開発を主導、2009明石工場製造部長、2012年技術研究所長、2014年富士山工場長。2017年執行役員生産部長、2019年執行役員明石工場長、2020年執行役員研究開発本部長を経て2022年3月より現職。


高額投資の新技術開発に挑戦するも大失敗


―――ターニングポイントとなったキャリア上のエピソードを教えてください。

入社8年目の1996年から3年間取り組んだ「次世代無菌充填システム(電子線殺菌)」の開発に失敗したことが私のターニングポイントです。当時の私は、工場から研究所に異動となり「次世代の技術開発をしなきゃ!」と燃えており、上司にお願いをして海外の飲料技術展に行かせてもらうなど、積極的に情報収集に努めていました。世界中の新しい技術情報を吸収した上で当社を見たときに、化学薬剤を使用した「十六茶」のボトル殺菌過程に課題を感じました。具体的には「PETボトルも厚く、化学薬剤を大量に使用するため使用済みの薬剤廃棄が多い。いずれ消費者の支持を得られなくなるのではないか」ということでした。

ISBT(飲料技術者世界会議)に出席後果汁工場視察へ

この課題を解決したいと思い挑戦したのが、「次世代無菌充填システム(電子線殺菌)」の開発でした。完成までに3年の月日と多額の開発費をかけ、何とかシステムは完成しましたが、設備が大きく高額となったことで、当社工場への導入には至りませんでした。特許など技術成果は残せましたが、大きな挫折を味わいました。
さらに追い打ちとなったのが、その数年後、同様のシステムの実用化が進み、競合企業の工場に導入したことでした。

フロリダのオレンジ搾汁工場を視察時の様子。

失敗からの学びを生かし世界初のシステム開発に成功!


―――「次世代無菌充填システム」開発での失敗をどのように生かしたのでしょうか。

この失敗での反省点は大きく2つありました。1つ目は、完璧を目指し完全殺菌にこだわったこと。他社は当時PETボトルを充填工場内で作るようになってきたので、作り立てのボトルはそれほど汚れていないという発想のもと、完全殺菌する必要がないと考え、実用化に成功していました。2つ目は、研究所だけで進め、生産本部や工場などと連携が取れていなかったこと。ここでの学びが2008年「炭酸飲料無菌充填システム」(※)の導入につながりました。

開発着想当時、当社は赤字からの復活の過程にあり、生産部門では最適生産体制の構築に着手していました。関東で2ライン、関西で1ライン、3ライン合計で3,000万函製造することが最適生産上は必要だったのですが、当時は単品で3,000万函を製造できるような商品がありませんでした。そのため、それぞれ専用ラインで製造していた炭酸飲料の大型・小型PET、果汁飲料の大型・小型PETなどの商品を1つのラインで製造できるようにしようと考えました。

また、さらに生産性を上げるにはPETボトルも自分達でつくらなければなりませんでした(PETボトルの内製化)。しかしながら、当時の技術ではこれらをまとめて実現できませんでした。そもそも、果汁炭酸飲料などで使われる耐熱圧のPETボトルは容器メーカーでさえ製造が難しいと言われており、内製化は実現できそうにない状況でした。相当悩みましたが、考え抜いた結果、「無菌充填システムにすれば耐熱や耐熱圧PETボトルは不要となる!これならいける!」と閃きました。そうです。失敗した「次世代無菌充填システム」が「炭酸飲料無菌充填システム」につながったのです。

過去の失敗から、必要十分な殺菌レベルに抑え、日本で最高の技術を持つメーカーと提携し、社内では開発をプロジェクト化して、関わる全ての部署と連携をとるようにしました。結果、当時業界初となる「炭酸飲料無菌充填システム」の導入に成功しました。また、この充填システムは「フレッシュクオリティ製法」としてマーケティングでも活用され、三ツ矢ブランドのV字回復に大きく貢献できました。

後輩に伝えたい想い

エリック・バーンさんの「過去と他人は変えられない。自分と未来は変えられる」という言葉をお伝えしたいと思います。失敗することや思い通りにならないことはたくさんあると思いますが、自分を信じて大きな夢を描いて前へ進んでほしいと思います。人間が想像できたことで実現できなかったものはありません。「こんなことができるようになればいいな」という発想を大切にして、自ら行動し、少しずつ積み上げていけば、きっと未来は変えられるはずです。

私の勝負飯


勝負飯はうなぎです。子どもの頃から大好きで、大切なプレゼンや交渉事の前に食べています。決まって行くお店などはないのですが、福岡出身なのでせいろ蒸しが好きです。ただ、東京や関西では食べられるお店が少ないんです。これまで単身赴任を3回経験する中で、うなぎを自分で美味しく簡単に作れる方法を色々考えました。結果、市販の冷凍うなぎを炊飯器に入れて炊き込みご飯を作る方法に辿りつきました!

勝負飯はうなぎ!(写真左)、自分であみ出したうなぎの炊き込みご飯(写真右)

―――ありがとうございました!


今回の「私たちのターニングポイント」はいかがでしたか?
次回もお楽しみに!