朝 いそこ 

25歳社会人。眠れない夜があるときにぽつぽつ更新。ちゃんとしたエッセイのときも、日記のときも、ブログのときもある。書くときのスイッチが違うので好みのものを読んでください。深夜ラジオみたいなものでありたい。

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最近の記事

ひとり旅ばかりだった私が大切なひとと諏訪に行く話

行きたいところがあるわけじゃなかった。 でも、どっか行きたいなって気持ちはどっか行きたいなって思っているうちに実行しないと、どこへも行けなかった自分ばかりが積み重なって腰が重くなるから、そろそろどっか行こうかなって思ってた。 そんな時に「週末、どっか行っちゃう?」って恋人が言って、弾みに乗ったわたしたちはすぐさま行き先を決めねばならなくなる。決めねばならない、という言い方をしたけれど、これはとても楽しい大人の贅沢。だって旅は行き先を決めるところからもう旅なのだから。 同じ景

    • 恋とか愛のお話。恋人になるというのは、この人のことを好きでいるという決意

      恋のはじまりは衝動だけど、続けていくのは、その人のことを好きでいる、という意志なんじゃないかと思う。 出会ってかなり間もない頃に、降ってきた隕石に当たってしまうみたいに避けることのできない速度でわたしが恋に落ちてしまった相手がいまの恋人なのだけど、はっきりと、この人のことを好きでいようと決意したのは恋人になって合鍵をもらった日のことだった。 あっさりと何気なく渡された合鍵を、こちらもあっさりと自然に受け取って、部屋を出て電車に乗って自分の部屋へと帰る途中で、ふと、このひと

      • 抜けられないトンネルをあと一歩、ひかりの方へ引っ張ってくれるような恋

        「できることをやれるだけやってだめだったら、うまく忘れて生きていけます。言いたいことを言えなかった恋ほど残ってしまうけれど」 わたしがふがいない恋に傷ついて情けないほど泣いていた夜、よく行く喫茶店のマスターが穏やかに微笑みながらそう言った。 ぼくもかっこ悪く縋りついた恋がありました、とはにかんで。 恋だけではなく、いろんなことがいっぺんに襲いかかってきて、よろよろと夜のひかりを涙に滲ませながら歩いていたあの頃。 「どうしたらいいんですか。わたしはもう何も信じられないし傷つき

        • しあわせはドーナツの穴みたいなものです、という恩師の言葉を思い出し、その意味を考える夜

          わたしは中学生のころ、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が好きだった。 そんなことを言うジョバンニに対しカムパネルラは「けれどもほんとうの幸いはいったい何だろう」と返す、この場面を読んで以来ずっとわたしは答えを見つけられずに生きている。 でも、あのころ、小さいわたしに一つのヒントをくれた国語の先生がいた。銀河鉄道の夜を持って、「ほんとうの幸いってなんなの?」と問うわたしのことを嫌がりもせず、真摯に答えてくれたおとながいた。 「しあわせっていうのはドーナツの穴みたいなものなんだよ

          好きだったひとと、好きだった街の小さな部屋の話

          好きだったひとのことを思い出すとき、その人の顔や匂いは記憶から薄れていってしまったとしても、その人と過ごした街の美しさみたいなものは鮮明に思い出すことができる。 過ごした時間っていうのは街とともに刻まれているんだろうか。 記憶に残るひとつめの街。 日の光が美しく差し込む神社がある街だった。その神社を通り抜けた先に好きだったひとの暮らしていたアパートがあり、わたしたちはよくそこで待ち合わせをした。 坂道の多い街で、その人に逢いに行くためにはのぼったり下ったりしなくてはならな

          好きだったひとと、好きだった街の小さな部屋の話

          春、初めての一人暮らし、新社会人、スクランブル交差点を渡れなかった日のこと

          「いろいろなことにたくさん手を伸ばしてしまって本当に大切なことを零してしまわないようにね。あなたにとって大切なことをあなたが落とさない限りは、すごいエネルギーを持っていることを保証するよ」 と今年の3月、大学院を卒業するわたしに向かって、ひと足さきに社会人になっていた友人がそう言った。 3月は年度末だというだけで、ちょっと特別な匂いがする。ただ月が変わるだけなのに、明日が今日になるだけなのに、3月のときには4月が永遠にたどりつかないものであるかのように感じた。 だから友人が

          春、初めての一人暮らし、新社会人、スクランブル交差点を渡れなかった日のこと

          もう何もかも嫌だと思って迷子になっていたはずが、気づいたら中国でおいしいご飯を食べていた話

          3月14日の深夜25時近く、わたしはひとり、深夜の羽田空港にいた。 思えばその日までの数週間、中国に逃げ出してやる、くらいの強い気持ちを持っていたから過ごせていた。 今まで24年間のらりくらりと朗らかに過ごしていた分貯まっていた不幸ポイントみたいなものが一気に降りかかり、東京にいることが耐えられず石垣島へ行ったすぐ後に、わたしは中国行きの飛行機を予約していた。 羽田発、天津空港乗り換えの厦門【アモイ】空港行きチケット。時間を全く確認しなかったせいで、キャンセルが効かない期間

          もう何もかも嫌だと思って迷子になっていたはずが、気づいたら中国でおいしいご飯を食べていた話

          食べることは生きること。悲しいことがあって駅のホームで食べた真冬のアイスの味を覚えている

          食べることは生きることだなあって、最近よく思う。 少し遠回りをして、ドラマの話をしよう。 ドラマ「MIU404」や「アンナチュラル」は食事のシーンがよく出てくるから好きだ。特に「アンナチュラル」でミコトがあんぱんを差し出す場面は名場面なので覚えている人も多いはず。それ以外にも、過酷な仕事の中でミコトは天丼だとか、肉だとか、そういうがっつりしたものをよく食べている。 他にも「エルピス」で、ずっとご飯を食べられなかったエナがタクローとならカレーが食べられるようになるのも印象的な

          食べることは生きること。悲しいことがあって駅のホームで食べた真冬のアイスの味を覚えている

          旧友と話したら、想い出の夏の美しさを思い出し、胸を焦がして眠れなくなった話

          14歳のころの友人から、何年ぶりだろう、インスタでメッセージが届いた。 「あの時は美しかった。今も美しいはず」 そのとき友人はインスタのストーリーに「あの頃」という名のプレイリストをあげていた。わたしはそのプレイリストの中身を見て胸がぎゅっとし、スタンプを送った。二人で聴いた音楽が蘇る。 その返信が、上の言葉だった。 「あんなに苦しかったのに美しく見えるね。かけがえのない日々だね」 とわたしは返した。本当に久しぶりにメッセージを交わしたのだから、聞きたいことも話したいことも

          旧友と話したら、想い出の夏の美しさを思い出し、胸を焦がして眠れなくなった話

          全落ち就活を経験したわたしが、本当に欲しいものは何か考え直した二年間。〜2度の出版就活を経て、人生の節目で何を選んで何を信じたらいいのか、負けから学んだこと〜

          遠子ちゃんになりたかったわたしは、小学生の頃から出版社に入ることが夢でした。 野村美月の『文学少女』シリーズを手にしたあの日から、遠子先輩になりたくて、作家を支える編集者に憧れを持ちました。   だから大学生になったときも、わたしは出版社に入るんだ、これだけ思い続けて叶わない夢なんかあるものか、と思っていたのです。 ところが。 惨敗。 これはわたしが一度、夢破れてから夢を再び掴むまでのお話です。 22卒、初めての就活「二兎追うものは一兎をも得ず」は本当なのか?出版社は狭き

          全落ち就活を経験したわたしが、本当に欲しいものは何か考え直した二年間。〜2度の出版就活を経て、人生の節目で何を選んで何を信じたらいいのか、負けから学んだこと〜

          「そりゃ縁切り神社しかないよ」と言われてひとり、安井金比羅宮に向かった話

          「あんた、安井金比羅宮って知ってる?」今年のゴールデンウィークに突入する、ほんの少し、数日前のこと。 中学時代いわゆるまぶだちで、その後も十年以上にわたって交流が続いている友人が、わたしのド底辺生活の話を聞いてげらげらと笑っていた。むしろ、げらげらと笑ってくれるのは彼女くらいで、その底抜けた明るさにわたしは本当に救われていた。 「散々だったんだよ本当に」 「聞く限り、ほんとに最底辺って感じだねえ」 「会うひとすべて、ちゃぶ台をひっくり返してくるような日々でさあ。あっちに逃げて

          「そりゃ縁切り神社しかないよ」と言われてひとり、安井金比羅宮に向かった話

          眠れない夜に旅の話 石垣島PART2

          西表島・由布島この日から、友人と離れ、ひとりで離島を回ることにした。 ひとりで行く良いことといえば、計画通りじゃなくても、そもそも何も決めなくても、行きたい方へ行けばいいということ。 ゆっくり起きていいし、ターミナルについてから間に合うフェリーを探して、そこから行く島を決めてもいい。やっぱりやーめたってターミナルでアイスだけ食べて帰ってもいい。 旅行がたびたび疲れるのは、計画を立てて、計画通りに動こうとするからだ。周りの意見に合わせたり、みんなの行きたいところを順番に、なんて

          眠れない夜に旅の話 石垣島PART2

          眠れない夜に旅の話 石垣島PART1

          ふと今夜思い出したのは、今年の三月に行った旅行のこと。 わたしはこの三月に、石垣島および八重山諸島に一週間、中国の厦門および福鼎および上海に一週間、滞在していた。 石垣島に行こうと決めてそのころのわたしは、どこかへ逃げ出したい、どこか遠くへ行きたいと強く思っていた。全てが嫌に成り果てていた時期でもあり、何もかも失ったように思えた時期でもあった。実際、いろんなものを失っていた。家族も恋人も住む場所もお金も。 石垣には友人がいた。 「こっちきたら? わたしは仕事で家にいないし

          眠れない夜に旅の話 石垣島PART1

          眠れない夜に短歌を詠んでいく

          眠れない月夜に光っていた窓辺 恋だったものをとかしてねむる昨日に引き続き、眠れない夜です。 忘れることのできない恋にじたばたしていました。 先日、職場の尊敬する先輩に「あなたにとって恋ってなに?」と聞かれて それ以降、ずっとその答えについて考えています。 さみしいは、ひらがなだなと思うのに。寂しいと言うあなたのさみしさラインの漢字変換ひとつでさえ、すれ違ってく心にさみしくなってしまう。 夜明け前 小さな寝息がこだまして あなたが起きる前に出る天国小さなアパートの一室が、そ

          眠れない夜に短歌を詠んでいく

          眠れない夜にしかできない話をするって決めた

          わたしと同じように眠れない夜を過ごしているひとに、ラジオをするみたいに話をしようと思いました。 ここのところなかなか人生の難しさを感じることが多くなり、それは、新しく社会に放り出されたものとして適正な悩みなのか、そういう年齢を迎えた登竜門的な憂いなのか。わからないけれど、なんだか急に熱を出して寝込むことが増えたことだけは確かです。 もうすぐ25歳になります。 うまくいかない日々を誰もが抱えているとは思うけれど、その誰もが朝の電車で、ビジネス街のランチタイムで、雑多な街の飲

          眠れない夜にしかできない話をするって決めた

          喫茶ゆりあぺむぺる

          吉祥寺駅から徒歩3分、大通りなのに気をぬくと通り過ぎてしまいそうな上品な佇まいで、よく見ると扉の上に「ゆりあぺむぺる」と店名が書かれていました。 (かわいい〜〜〜!!) 何色のクリームソーダにしよう最近は緑だけじゃなくて多色なクリームソーダ。緑の次に多いのが青なのですが、「ゆりあぺむぺる」では季節限定も合わせると十色くらい用意されています。 淡い色も扱っているので、乙女心をくすぐる......。 何にしようか迷ったのですが、最近ヴァイオレットエヴァーガーデンの映画

          喫茶ゆりあぺむぺる