書評:すごい物理学講義-カルロ・ロヴェッリ (河出文庫)
すごい物理学講義 (河出文庫) 文庫 – 2019/12/5
カルロ・ロヴェッリ (著), 竹内薫 (翻訳), 栗原俊秀 (翻訳)
カルロ・ロヴェッリ(Carlo Rovelli,1956- /イタリア/理論物理学・作家)-その原題は...
まず、この原題は、「現実は目に映る姿とは異なる」(La realtà non è come ci appare: La struttura elementare delle cose)-これが、イタリア語のタイトルだ。
そして、この書籍の流れは、「ループ量子重量理論の解説書」であると言う事だ。
(註)量子力学は、一般相対性理論と共に現代物理学の根幹を成す理論として知られ、主として分子や原子、あるいはそれを構成する電子など、微視的な物理現象を記述する力学であり、その1つが「ループ量子重量理論」となる訳だ。
FUTURES LITERACY(未来のリテラシー)に視点をあわせて考えてみたい
従来、地球は不動であり、世界の中心を成すと信じられていた。ある意味、今もそうかも知れない。
そして、クォークやブラックホールや、光の粒子や、空間の存在を我々は学んできた。
ただ、人類が成長するにつれ、「現実は目に映る姿とは異なる」ことに気づく事になる。
現実とは、粒状の網の目にほかならない。それは、基礎物理学の一分野である、「量子重力理論」が新奇な世界(宇宙物理の先端理論)を、今、明らかにしつつあると言うことだろう。
それは、一人一人が違う時空間を生きているということになる。そして、ここ四半世紀(Quarter century)のイノヴェイションを支えてきたデジタル革命は、いわゆる「0と1の世界」だった。しかし、今は違う、量子の世界は、0でもあり、1でもある状態が現れる世界だ。2020年代に必須である、「FUTURES LITERACY」(未来のリテラシー)に視点をあわせて考えてみたい項目だ。
以下に、この書籍が扱う項目とごく概要を記した。
第1部 起源
第1章 粒-物はどこまで分けられるか?事物の本質、それは、世界は幻視できている。
(ループ量子力学理論から帰結する)
第2章 古典:ニュートンとファラデー:宇宙を支配する重力
第2部 革命の始まり
第3章 アルファベット- 曲がる時空間
・地球が太陽の周りの回っているのは、太陽の周囲の時空間が屈曲しているからである。
・高い場所ほど、時間は早く過ぎて去っていく。
第4章 量子- 複雑怪奇な現実の幕開け
・場と粒子は同じもの
(1) 量子1-情報は有限である
(2) 量子2-不確定性
(3) 量子3-現実とは関係である
・光は「場」の波だが、同時に粒状の構造も備えている。
第3部 量子的な空間と相関的な時間
第5章 時空感は量子的である
第6章 空間の量子
第7章 時間は存在しない(別書のタイトルにも、和訳の際に使われたが・・)
・世界は、なにからできているのか?
・それは、共変的量子場という1つの素材からできている。
第4部 空間と時間を超えて
第8章 ビックバンの先にあるもの
第9章 実験による裏付けとは?
第10章 ブラックホールの熱
第11章 無限の終わり、ビックバンにより、宇宙は、無限に小さな1点となり、この限りなく小さな1点は姿を消す・・・(ZEN的な視点- 有と無の外側の無)
第12章 情報→熱、時間、関係の網
量子力学を形づくる全体の枠組みを以下の公理から引き出せします・・
・公理1:あらゆる物理的な系において。有意な情報量は有限である。
・公理 2:あらゆる物理的な系からは、つねに新しい情報を得ることが可能である。
第13章 神秘
ここで、7章と12章は、ポイントかも知れない、7章は、「時間の順序」という考え方だ、過去→現在→未来とはならない。そして、12章からは、熱の時間という概念を持って物理学的な起源が明確化される。
そこから、総じて、・・・
「ループ量子重量理論」を理解するための最短の道かも知れない。
その理論そのものの解説と、歴史的なエピソードで構成されている。(数式は、ほぼほぼ、ない、いや、極めて少ない)
この歴史的なエピソードについては、古代ギリシャの自然、哲学、古典力学、古典電磁気学、そして、一般相対性理論と量子論の概説だ。ただ、この哲学と物理の関係論が、多くの項目が、入れ込んであり、それは冗長(じょうちょう)かも知れないが、欧州の読者に向けてだろう。そして、作者は、科学史、科学哲学に造詣が深い・・
(註)この部分を東洋的考えると、例えば、禅的な視点では、「あなたが何を語ろうが、あなたはあなた自身という唯一の存在であり、どこへも逃げられない、それは、全世界があなたのものだからだ。これは、私たちが知り得る真理を超えている。究極の真理・・」鈴木俊隆(禅-哲学思考)に、通じるだろう。
この訳は、イタリア語から、直接、訳されていることも、翻訳者さまのご尽力を感じる。
「人間が現実として認識している世界は、人の脳がそのように認識しているだけで現実の世界とは異なる」この辺りを前提に読み進んでもらうと、斜めに、いや、飛ばし読みでも、完読(?)できるだろう。
物理理学書と言わず、哲学的にも、一読したい書籍だ。
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