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カテランのバナナと事件(ABMB-2019)

カテランのバナナと事件(ABMB-2019)

2019年のアメリカ最大級のアートフェア「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ(ABMB/Art Basel in Miami Beach)」。
2019年のフェアでもっとも話題を呼んだのは、エマニュエル・ペロタン(パリのギャラリー)のブースに出現した、マウリツィオ・カテランが本物のバナナを灰色のスコッチテープで壁に貼り付けた作品「Comedian」(2019)だった。

Comedian

フェアの初日には、同作のふたつのエディションが12万ドル(約1300万円)の価格で個人コレクターによって購入。3つ目のエディションは、15万ドル(約1600万円)でミュージアムが購入予約を行った。

バナナはマイアミのスーパーマケットで購入した

そのABMB(Art Basel in Miami Beach)で展示されたバナナは、ペロタンがマイアミのスーパーマケットで購入したものだという。
ただ、作品が購入される際には、カテランによる証明書と設置マニュアルが添付される。
同ギャラリーの創設者エマニュエル・ペロタンは、「購入」はあくまで作品の一部で、「証明書がなければ、この作品は物質的な表現にすぎません。誰かが買ったという事実が作品をつくるのです」と語る。-参照ニューヨーク・タイムズ

Comedian- ート・バーゼル・マイアミ・ビーチ(ABMB)

そのバナナが、フェア閉幕の前日に事件に遭った。

ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、デビッド・ダトゥナがバナナを壁から剥がして食べてしまったのだ。

ダトゥナは事件後、その行為を「Hungry Artist」というパフォーマンスと名付けて一連の動画をInstagramで公開している。
またこれらの投稿に「マウリツィオ・カテランの作品とそのインスタレーションが大好きです。とても美味しい」とコメントしている。-参照ニューヨーク・タイムズ

このデビッド・ダトゥナの行為に対し、エマニュエル・ペロタン(パリのギャラリー)は法的責任を追求しないとしている。

バナナのアートワークはグッゲンハイムのコレクションに・・

そして、2020年、マウリツィオ・カテランの非常に愛された(そして中傷された)バナナのアートワークは、匿名の寄付者のおかげでグッゲンハイムのコレクションになった。

バナナのアートワークはグッゲンハイムのコレクションに

そして、今も、そのバナナのバイラル彫刻(viral/口コミ)の模作と訴訟(カラテンが訴えられている事例も)も多いのだ。

マウリツィオ・カテラン(Maurizio Cattelan)

マウリツィオ・カテラン(Maurizio Cattelan,1960- /イタリアのコンセプチュアル・アーティスト)

Maurizio Cattelan

作品には、ユーモアと風刺が貫かれている。
その作品は、コンセプチュアル・アートであり、彫刻、インスタレーションアート、そして、剥製を扱った作品も90年代以降多い。
それは、社会的に染み込んだ規範と階層に関する、奥深い問いかけとも取れる。そして、キュレーション(curation)も行っている。
そのカラテンの風刺の効いた作品は、グローバルに、主要な美術館やベニス&ベネチュア・ビエンナーレ等でも著名だ。

「アートカタログを読む事や、ショーを作ることは私の学校」-Maurizio Cattelan

マウリツィオ・カテランは、イタリアの裕福とは言えない家庭で生まれ育ち、コンセプチュアル・アーティストとしての巨匠へと至る、アートに於ける多くのプロセスを、ほぼ独学で学んでいるのだ。それは、1980年代の初めにイタリアで木製家具の設計と製造からキャリアをスタートさせた。そのカテランには、繰り返すが、正式なアートの教育経験はない、だからこそ、社会的に深く染み込んでしまった常識や規範に関する、奥深くえぐるように、自らの視点で問いかけられる・・
マウリツィオ・カテランは、まさに、カリスマ的な現代アートの巨匠と言えるだろう。

artoday

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