リチャード・ロングとランド・アート作品
リチャード・ロング(Richard Long、1945- UK)
彫刻家・美術家であるが、その規模は、*ランド・アート(land art)に分類される作品が多い。
1960年代から、ミュージアムといった場所以外に、自然界で自然を対象にした作品制作した。
例として、作品は、屋外の自然を歩行し、石を並べて写真を撮ったり、そのときの歩行のメモを記録して制作・発表もある。
採集した石をギャラリーに幾何学的に配置する作品も数多い。その採集した石は切ったり削ったりはせず、そのままの状態で用いる。歩行する場所は、当初はイギリス国内であったが、グローバルに辺境等にも及ぶ。
(c)Richard Long
リチャード・ロングとランド・アートの流れは、「美術学校にあるような粘土や石膏といった素材ではなく、自然界にある自然の素材を使って作品を制作することを思いついた」と述べている。
初期のイサム・ノグチ(Isamu Noguchi,1904-1988/US 彫刻家・画家)等の影響もあるのかも知れない。そして、1960年代後半から、現在形のランド・アートはアメリカで発生している。それは、アメリカの商業主義的な美術の動向に対抗するかたちで、アーティストたちが屋外、そして、広大な砂漠をキャンバスに大規模な作品を構築した、その同時期に、リチャード・ロングは、ヴェネツィア・ビエンナーレに「歩行による線」を出展している訳だ。
比べられる事が多いのが、アメリカのロバート・スミッソンが、大型重機を利用して大規模なランドアート作品を制作した。
また、マイケル・ハイザー(Michael Heizer,1944- US/土木機械での彫刻-ランドアート)も著名だ。
ただ、アメリカのそれらの石火(せっか-素早いスパンでの動き)に対して、リチャード・ロングの作品は自然への干渉を最小限に抑えている点で対照的だと言われる。それは、特に近年、環境問題からの流れかも知れないのだが・・・
略歴-Richard Long
1945年、ブリストル(英)に生まれる。
1966-1968年、ロンドン芸術大学セント・マーティンズ美術学校を卒業。その在学中の1967年に発表した「歩行による線」で注目を集め、ヴェネツィア・ビエンナーレのイギリス館代表に選出されている。
1989年、ターナー賞を受賞。
1996年、世田谷美術館、京都国立近代美術館で個展「山行水行」。
2009年、高松宮殿下記念世界文化賞の彫刻部門を受賞。
主な作品の例
1967年、歩行による線(Walking line):草原を歩いたときの痕跡を写真で記録した作品。セント・マーティンズ美術学校に在学中にヴェネツィア・ビエンナーレで発表した。
1985年、スイス花崗岩の環(Swiss Granite Ring):スイス花崗岩が直径5.4mの環状に床に配置されている。
1990年、コーンウォールの粘板岩の線(Slate lines in Cornwall):コーンウォールで採集した粘板岩の小片を25.4m×2.3mの長方形状に床に配置した作品。長方形の辺の部分が直線状になるように工夫して配置されている。
Fig.歩行による線(Walking line)
Fig.スイス花崗岩の環(Swiss Granite Ring)
Fig.コーンウォールの粘板岩の線(Slate lines in Cornwall)
(c)Richard Long
(註)ランド・アート (land art):自然界の素材(岩、土、木、鉄など)を使い、自然界に作品を構築する。
特には、砂漠や平原などに作品を構築する美術のジャンルが多いかも知れない。アース・アート (earth art)、アースワーク (earthworks)、環境アート(Environmental art)などとも呼ばれる、それの閾はない。