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アレッツォ紀行 (音の美しさ 番外編) 

「音の美しさ」のパート2は、ただいま準備中なので、今回は、番外編として、前回登場したアレッツォの街を、ご案内します。いつもは文章多めですが、今回は写真が中心です。

グイド僧の背後に、遠く見えるのが、アレッツォの大聖堂です。尖塔が空に向かってスっと伸びています。

高台にある大聖堂までの、ゆるやかな坂道。

街の中心にある、大きな広場

大きな広場と呼ばれるピアッツァ・グランデ。毎月第1週目の日曜日には、骨董市が開催されます。

傾斜に沿って作られている。ゆえに、広場も斜め。イタリアの広場あるある。

意外に傾斜しているけど、骨董市で、ものが転げ落ちないのかしら。

なにやら惹かれる後ろ姿。ロマネスク様式の教会は、後ろ美人。

ロマネスク様式の教会と、ウマヘタ彫刻

正面は、柱が整然と並んでいて、この柱があるがゆえに、ドッシリせず、軽やかな重力感。

正面扉上
アーチ部分に人がいる
12人いる。
ということは、12ヶ月だ。
1月・2月・3月(たぶん)
4月・5月・6月(たぶん)
7月・8月・9月
9月は葡萄の収穫のシーン
10月・11月・12月
11月はカブの収穫をしてるっぽい。
12月は冬に向けて、
ハムとかサラミとか肉の保存食作り。

正確なカレンダーもなく、正確な時を告げる時計もなかった時代。月と星の動きで、季節の移り変わりを知る。

ロマネスク時代やゴシック時代の教会の、正面扉付近を見渡すと、たまに遭遇する年間作業カレンダー。ウマヘタな表現が、いい感じ。

内部は重厚な石積みで、ゴシック様式。暗闇のなかに、差し込む光。

光に照らされる、絵画。1300年代に描かれたもの。

天井が高い。屋根が新しい感じだから、天井だけ再建されたのかも。

高い柱の柱頭にジっと目を凝らしていると、見えてくるもの。

人間か、聖人か。
動物
人間を襲う動物
動物はキリスト教で、人間は異端者かな。
ギャーっという声が聞こえてきそう。

ここまでは、似たようなものを、ほかの教会でも見たことあるけど、これは、初めて。

顔がいっぱい

1つづつ、口が開いてる!
歯まであるー!
年月と共に歯が欠けてる(笑) 

どうやって彫ったんだろう!?

ここであまり時間を取りすぎると、あっという間にお昼になり教会が閉まってしまうので、次へと向かいます。

一直線に、リズムが伸びてて、繰り返しが美しい、回廊。

いい感じのアーチ。中央にはメディチ家の家紋。そして青い空!

『我らがメディチ家は、アレッツォ国も治めたのじゃ。ほっほっほ!』

とでも言いたげに、トスカーナ地方どこにでもあるメディチ家の家紋。

唯一、征服できなかったのは?

アレッツォを訪れた、最大の目的である教会に、気持ちは急ぐも、またも立ち止まってしまう。

1792年から99年にかけて、アレッツォきっての富豪一族アルベルゴッティ家により建てられたらしい。

豊穣を表しているのかしら。
ルネッサンス時代なら
彫刻で作るところかな。
あざやかな色彩が、よく映えます。
中央上にみえる黒い馬はアレッツォのシンボル。
キャアニーナ牛。
トスカーナ地方には欠かせない
貴重な白牛です。

数学画家が残した、アレッツォの宝物

やっと辿り着いた目的地。お昼休みなしで、朝から夕方までずっと開館しています。焦らなくても、良かったみたい。

見た目、とってもシンプルな教会。
内部もシンプル。

だけど、ここには、これがあるんです。
主祭壇の中に入ってみましょう。
じゃじゃーん
フレスコ画づくし!

作家名:ピエロ・デラ・フランチェスカ 
誕生日:1412年頃
誕生地:アレッツォ近郊のサンセポルクロ
職業:画家&数学学者

数学学者らしく、構図といい、表情といい、仕草といい、ひどく均整の整った絵を描きます。髪の毛の一本まで、丁寧に描写してるけど、途中で面倒になったのか、帽子を被っている人物も多し。彼の、そんなところも好き。

レジェンダ・アウレア (Legenda aurea)と呼ばれる、1290年代に書かれた「黄金伝説」のなかの『聖十字架伝説』がテーマ。

主祭壇の左右正面いっぱいに、フレスコ画が描かれています。修復を終えたので、色も鮮やか。

まだイタリアが統一されていない時代なのに、まるでイタリア国旗のような三色カラーのパンツ。紐で結びつけるタイプだったんですね。描写も細かい!

こちらは新約聖書の、受胎告知。1ミリともブレない正確な建物と、人物の構図。これぞまさに、彼が、彼である、作品。

ダメだわ。この橋は渡れない。この木に、救世主が架けられる未来が見えたの。この聖なる木に祈りを捧げます。

ソロモン王。わたくしはシバの女王です。こちらに赴く途中で、聖なる木により救世主が磔刑になる場面を予知しました。どうか、この木を、人の目に晒せないようにしてください。

その後、シバの女王の予知通り、キリストが磔になります。時を経て、古代ローマ時代。

コンスタンティヌス大帝、あなたは、十字架の加護を得て、明日の戦いは勝利するでしょう。

十字架を手にしている、夢のなかで告げる天使。白のグラデーションは、本当に光が差しているよう。研究によると、背景の星空も、こんな感じかな〜と、適当ではなく、天文学的に正確に描かれているそうです。

コンスタンティヌス大帝は、その後、キリスト教を信仰し、キリスト教の発展に大きく貢献するようになります。

コンスタンティヌス大帝の母ヘレナ。彼女は、この物語で主役級に重要な人物。磔刑に使われた、聖木を探す旅にでかけます。

長旅の末、ようやく聖木が見つかります。

本当に聖木かしら。お亡くなりになった、こちらの方に、近づけてみましょう。あら!生き返ったわ! やっぱり聖木なのね!

聖十字架。奇跡を起こす十字架。

権力者は我が物としたがり、奪い、戦いが起き、ようやくのこと、東ローマ帝国皇帝が奪い返し、キリストが行なったのと同じように、靴や衣装を脱ぎ捨て、慎みを持ち、エルサレムに入城し、めでたしめでたし。

ざっと、こんな感じの物語です。ピエロ・デラ・フランチェスカは1492年まで生きたので、80歳!ものすごく長生きしたんですねえ。

こんなところにも、彼の絵が。ストリートアーティストの作品。

丘のてっぺんにある大聖堂へ

お腹が空いたので、サクっとパニーノランチ。

坂道を登っていくと辿り着く、市庁舎。

市庁舎の前には、尖塔がスっと空に向かって伸びていた、大聖堂が建っています。装飾なしの、シンプルなファサード。

外見とは裏腹に、どこも、かしこも、立派。

天井の装飾が鮮やかで細かくて、
ずっと上を向くから首が痛くなってくる。
日を受けたステンドグラスの
色が壁に反射して幻想的。
光の力はすごい。
ひとつの石の塊から作られたそうで、
1300年後期の作品。

そして、ここにもピエロ・デラ・フランチェスカの絵が、独特の雰囲気を漂わせています。

色の配色、手の動き、マントの開き具合、すべてが計算されていそうな構図と、静謐な静けさの表情の、マグダラのマリア。

左隣の建造物が、フレスコ画を囲むアーチ半分に被ってるけど、ギリギリで、フレスコ画が残されて良かった。

時代の変遷で、壊されたり、塗りつぶされたりして、消失したものも多いのです。

床下を覗くと、こんなものが。なんとなく新しい感じ。

1289年のカンパルディーノの戦い。アレッツォの司教が舵を取っていたけど、途中で戦士。戦場に埋葬されたいたのを、2008年(!)にアレッツォの大聖堂の床下に移しかえられたそうです。

800年後に、亡骸を移し替えるって、すごくないですか!? どういう発想でそうなるのかしら!?

歴史って、点じゃなく、線で繋がっていて、いまに至るんですね。まだちゃんと残っていたのかなぁ。なんて余計なことも考えちゃいます。

ちなみに、カンパルディーノの戦いには、若きダンテ・アリギエーリも参戦したということです。このときのアレッツォの敵はフィレンツェ。ダンテは敵だったんだ!

アレッツォ散策

アレッツォは、決して大きな街じゃないのに、本当に教会が多い。

1200年代の画家。チマブエの磔刑図。当時の革新派画家ジョットの御師匠さんです。背後からの光が、まるで後光のよう。

アレッツォといえば、忘れてはいけない、この人物。ジョルジョ・ヴァザーリ。

メディチ家コジモ1世の右腕となり、フィレンツェのヴェキオ宮殿を居住に建て替え、いまのウフィツィ美術館を建て、ヴァザーリの回廊を6ヶ月で完成させ、その傍で、絵を描き、芸術家列伝を執筆した人物。

彼は、タイムマネージメントを、いったいどうやって管理していたんだろう。ぜひお伺いしたい。タイムマシンに乗って会いに行きたいひとり。

骨董市が月一で開催されていることもあり、こんなお店が立ち並んでいてるのも、アレッツォの特徴。

メインストリートを外れると、中世時代の細い道が入り組んでいて、これがまた赴きがあっていいんです。

人っ子ひとりいない。シャッター街じゃないですよ。お昼休みで、まだ閉じています。


  • フィレンツェから電車で1本!

  • 電車のタイプにより、1時間から1時間30分で到着です。料金は、22年4月時点で片道8.7ユーロ(約1200円)。

  • 通勤通学で利用されるローカル線なので、本数も多いです。

  • ショートトリップにオススメ。

電車サイトで時刻チェック🚃

ピエロ・デラ・フランチェスカを鑑賞する前売り券も販売しています。たぶん、当日でも大丈夫。

アレッツォの観光局

次回は、「音の美しさ」の続編「音楽は音だけにあらず。」をお届けします。

最後までお付き合い頂き
ありがとうございます!




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イタリアのモノづくり | ようこ
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