物理数学の世界 #17 〜テンソル解析(1)〜
物理数学の世界。始まります!
前回は多変数関数(2変数以上で構成される関数)の積分計算(重積分)について扱いました。
これからしばらくは物理の話が続きます。これまで、質点や剛体の力学を取り上げてきましたが、これからは連続体の力学(工学の範囲では材料力学に相当)について進めていきます。
今回は連続体を数学的に扱うために必要な「テンソル解析」について。分量が多いので2回に分けました。
前半では、ベクトルの内積や外積をテンソルを用いて説明します。以前のベクトルの回でも登場しましたが、テンソルの具体的な説明は避けていたので、きちんと説明したいと思います。
整理したノートを公開
実際にノートにまとめてみました。総和規約に関するルールは独特ですが、長くなりがちなベクトルに関する演算を手短に書けるため、非常に便利です。クロネッカーのデルタ(記号)や置換記号は何かと登場することが多いので、理解しておくと良いかと思います。
今回説明した範囲は主に1階テンソルです(1階テンソルは添字が1種類で構成される変数のこと)。また、テンソル積は2階テンソルであり、事情が異なります。この辺は次回で説明したいと思います。
テンソルという表現は、大学レベルで登場するか微妙なところです。私は大学院に進学してから学びました。慣れるまでは難解に感じてしまいそうですが、この考え方は他の分野でも使われるので、理解しておいて損はないかと思います。
テンソル解析の難易度
連続体の特徴としては、物体の並進運動と回転運動に加えて、変形(形を変えること)を扱います。考えるべき変数も多くなるので、質点や剛体に比べてハードルは上がります。
まず、連続体の力学は「テンソル」という形で記述されます。物理量が大きさに加えてn個の方向の情報を持つとき、nをテンソルの階数と呼びます(同量をn階テンソルと呼びます)。
物理量が大きさと同時に方向の情報をいくつ含んでいるかを調べることで、物理量の本質的な特性(機能)を把握することができます。
例えば、質量や温度などは大きさだけで定まり、方向の情報は含んでいません。つまり、質量や温度は0階テンソルです(スカラー量とも言います)。
力や変位、速度、加速度は大きさと1つの方向の情報を含んだ量であり、1階テンソルです。また、材料力学の話で登場する応力やひずみは、大きさ2つの方向の情報を含むので、2階テンソルです。
おわりに
今回は「テンソル」の意味を説明し、ベクトルの内積や外積をテンソルで表現することについて扱いました。
今回は1階テンソルが中心でしたが、次回は2階テンソルについて説明します。また、連続体の力学で扱う範囲のテンソルについて、深掘りをしていきます。
少し難しめの内容になりますが、お付き合いいただけたら幸いです。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。
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