機械力学から見る剛体運動論 -5-
様々な剛体運動について考える「機械力学」ですが、その内容は高校物理の範疇から高度な数学の知識を使うところまで。長いスパンで関わるであろう、機械工学系の基礎になる学問です。
今回は数回に分けて、機械力学の話を深掘りしていきます。前回は運動方程式を導く場面で多く使われるテクニック(Lagrangeの方程式)を示しました。
これまでは1自由度もしくは2自由度の質点の動力学を考えてきましたが、現実はそれよりも自由度が多い「多自由度系」の動力学を対象とします。
多自由度ということで、数学で言うところの「行列」を扱うことになります。今回は多自由度系における特性を考えることにします。
固有値問題
ここでは、簡易的に粘性減衰が無い場合の自由振動を考えます。外力も特に存在しないものと仮定すると、運動方程式は次のようになります。
$${\bm{M\ddot{x}}+\bm{Kx}=\bm{0}}$$
3自由度以上の場合は、各係数は基本的に数値の集まりである「行列」として表します。Kは剛性行列、Mは質量行列と呼ばれます。ここで登場する変数は「行列」として捉えることになります
各質点の情報は集約されますが、各々の角振動数は基本的に一致します。一致すると考えないと、上記の方程式が成り立たないためです。そこで、固有ベクトル(固有モード)を次のように決めます。
$${\bm{x}=\bm{a}sin({\omega}t+\phi)}$$
これを上記の運動方程式に代入すると、次のように整理できます。
$${(\bm{K}-\omega^2\bm{M})\bm{a}=\bm{0}}$$
ここで、固有ベクトルaが有値であるための必要十分条件を考えます。
$${|\bm{K}-{\omega}^2\bm{M}|=0}$$
上記の方程式から求められる数値を「固有値」と言います(固有値問題)。固有値問題は他の分野でも登場することが多いです。
多自由度系の問題の扱い方
3自由度の振動機構に対して、固有値と固有モードについて考えます。
問題を解くにあたり、剛性行列や質量行列の成分を求めるには、運動エネルギーTと位置エネルギーUの総量を計算する必要があります。そこから一般座標xを変数として、両エネルギーの関数を偏微分する流れです。
今回の例に倣い、剛性行列と質量行列を次のように表します。
$${k_{ij}=\frac{\partial^2U}{\partial{x_i}\partial{x_j}} , m_{ij}=\frac{\partial^2T}{\partial{\dot{x_i}}\partial{\dot{{x_j}}}}}$$
以上を踏まえて、3自由度系の例題を見てみます。ばねに繋がれた3個の質点による連成振動について。
固有ベクトルを求める場面では、左端にある質点の変位を1と仮定して、他の2個の質点の振動がどれくらいの比率で動くのかを数値として見ています。
おわりに
今回は機械力学(振動問題)を中心に扱いました。まだまだ奥深い内容もありますが、本シリーズはここで一旦完結にしたいと思います。
また今後で時間が取れましたら、機械力学の第2弾ということで、再開することにします。ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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