【#43】材料力学の強化書 〜長柱の座屈現象(1)〜
今回のトップ画像はフィンランドの首都であるヘルシンキにあるヘルシンキ大聖堂です。ヘルシンキは自然の遊歩道と都会の暮らしの両方がすぐ身近にあり、美味しい食べ物、面白い博物館や美術館、ユニークな建築物にあふれています。
年代に囚われない機能的でミニマルな北欧建築がそこにはあります。ぜひ私も訪れてみたい場所です。
さて、材料力学の話に戻りましょうか。
前回はひずみエネルギーを用いた衝撃荷重に対する応力の表現について扱いました。現実の衝撃荷重に対する変形を求めるには、慣性力の影響を考慮する必要がありますが、ここでは簡易的に求める方法に留めます。
今回は長柱の座屈現象について扱います。短い棒に軸圧縮荷重を与えると、しだいに弾性破壊を生じます。一方で、棒がある程度まで長くなると、弾性破壊を生じるより小さな力ではりのようなたわみが発生します。
このような現象を座屈と呼んでいますが、今回からその座屈を理解するために必要なことを書いていきます。高度な数学の知識も出てくるので、必要に応じて書籍などを参照して頂ければと思います。
座屈について
長い柱に軸圧縮荷重を加えると、軸線に垂直な方向に変形する(たわみが生じる)ような現象が生じます。これを「座屈」と呼んでいます。また、座屈の生じるときの荷重を「座屈荷重」と呼びます。
座屈荷重は主に柱の長さ、横断面の形状、材料のヤング率に依存しますが、柱の支持条件にも左右されます。今回は両端回転支持の場合について追います。
一般的に座屈応力は降伏応力よりも小さいことが知られているため、長柱を設計で用いる場合は座屈応力を基準に行うことが多いようです。
基本的な例題(両端回転支持)
実際に両端回転支持の条件での長柱の座屈について、数式を用いて追いかけてみます。たわみの基礎方程式を利用して、実際に微分方程式を解く作業になります。微分方程式の具体的な解き方は参考書などを当たって頂ければと思います。
支持条件によって座屈荷重が異なるのは、一般解から境界条件を適用する際の方法が異なるためです。
座屈荷重を求めた際に、任意の整数(n)が登場しますが、座屈荷重はnの関数における最小値に相当することから、座屈荷重は次のようになります。
$${P_c=\frac{{\pi^2}EI_z}{l^2}}$$
この式から求められる荷重のことを「オイラーの座屈荷重」と言います。
座屈荷重を大きくするには、曲げ剛性($${EI_z}$$)を大きくすることが必要であることが分かります。
例えば、柱の断面積を増やすことにより、座屈が発生するリスクは小さくなると言えます。
おわりに
今回は座屈現象についての説明と、両端回転支持の場合についての座屈発生の条件について見ていきました。
微分方程式の扱い方がこれまでと異なるので、理解に苦戦する方も多いかもしれません。数式からの理解もだいじですが、長柱の場合は通常の降伏応力の他に、座屈荷重による応力を考慮する必要がある、ということを理解頂ければ良いかと思います。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。
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