物理数学の世界 #21 〜主応力と不変量(2)〜
物理数学の世界。始まります!
前回はコーシー応力テンソルに関する座標変換について説明してから、コーシー応力の本質である主応力と不変量の話をしました。
今回はその続きになります。主に不変量について話を進めたいと思います。話題は平均応力テンソルと偏差応力テンソルがほとんどですが、最後までお付き合いいただけたら幸いです。
それでは、後半戦のスタートです。
整理したノートを公開
実際にノートにまとめてみました。前回は主応力と主軸に触れましたが、その実体は座標変換を通して表面力ベクトル(t=σn)が外向き単位法線ベクトル(n)の実数倍(λn)に変わるということです。
コーシー応力テンソル(σ)は3×3の正方行列でもあるので、固有値(主応力)は基本的に3つ求まり、それぞれの主軸(n)は互いに直交します。
主応力は基本となる不変量です。その事実から、他の不変量を導いていきます。
この話は線形代数の固有値の考え方と同様です。気になる方はこちらの記事をどうぞ。
主応力を用いて計算される不変量として、平均応力テンソルと偏差応力テンソルを紹介しています。平均応力テンソルは、主応力方向の引張や圧縮による体積変化を表す量です。
偏差応力テンソルは導出が複雑ですが、静水圧軸を沿う平均応力テンソルと直交関係にあることから、一般的なコーシー応力テンソルから垂直応力を排した「せん断応力」に支配される量になります。
その導出はノート1枚では書ききれなかったので、別紙に続いてます。
特に、偏差応力テンソルの第2不変量(J2)が重要な役割を果たします。偏差応力テンソルの大きさと関係式が作れることを利用して、ミーゼスの降伏基準(降伏条件とも呼ばれる)に使われます。
降伏とは材料の変形上の性質が変化することです。弾性変形から塑性変形に変わることを指します。
そして、ミーゼスの降伏基準の話で登場するのが、ミーゼスの相当応力(ミーゼス応力とも呼ばれる)という指標です。その詳細な導出を3枚目に書いています。
ミーゼスの相当応力は3軸から構成される応力状態を一軸状態に置き換えた場合の指標でもあり、主応力と同様に実際の物理の分析でも用いられます。
ミーゼスの降伏基準について
これまでの情報を整理していくと、ミーゼスの降伏基準は静水圧軸からの距離が一定であるような応力点の集合を表すことが分かります。
つまり、主応力空間(主応力を3軸として表現した座標空間)において、静水圧軸を中心軸とする円筒形状を表すことを意味します。
そして、ミーゼスの降伏基準においては、平均応力(静水圧)を加えただけでは降伏することは無いということも表しています。この性質は実験結果とも矛盾しないので、今なお実用的な法則として使われています。
降伏基準については他にも様々なモデルが提唱されているので、ミーゼスの降伏基準が全てではありません。それはまた別の機会にでも話ができたらと思います。
おわりに
今回はコーシー応力テンソルの主応力から、不変量について話を進めました。
平均応力テンソルと偏差応力テンソルの物理的な意味にも言及しましたが、数式と物理を繋げられると理解が早くなる実例だと思います。
また、連続体力学の話は不慣でもミーゼスの相当応力は聞いたことがある方が多いかと思います(実用レベルで使用する機会があるため)。私も改めて起源から勉強することになり、新鮮な感覚でした。
次回からはコーシー応力に関してから、また別の話に移りたいと思います。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。
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