【#35】材料力学の強化書 〜3次元主応力について〜
今回のトップ画像は東京スカイツリーの夜景です。桜の木越しにスカイツリーを覗いた光景ですが、なかなか撮れない光景だと思います。こんなにスカイツリーの夜景が綺麗だとは思いもしませんでした。
さて、材料力学の話に戻りましょう。
前回は2次元の応力状態を理解する上で便利なツールである「モールの応力円」について扱いました。任意の応力状態の情報から、主応力や最大せん断応力を求めることが可能でした。
今回は3次元の応力状態に拡張しまして、そこから主応力を求める方法について見ていきます。
途中で行列(行列式)が出てきますので、知らないところがあるかと思いますが、よろしくお願いします(後日で行列の話も解説しておこうと思います)。
3次元の応力とひずみ
荷重を受けている3次元の弾性体内部の応力状態を直交座標系で表現すると、下記の通りになります。ひとつの面では、1つの垂直応力と2つのせん断応力が作用することが分かります。
応力かひずみのいずれかが既知である場合、3次元の応力とひずみの関係は下記のように表されます。なお、せん断応力については共役性が成立します。
実際の構造部材のほとんどが3次元の応力状態になるので、弾性範囲において成立するこの関係式は重要な意味を持ちます。
3次元主応力 〜固有値問題〜
これまでの説明も踏まえて、3次元の応力状態から主応力を求める方法を下記に示します。今回もノートで詳しく説明することにします。
導出の流れは2次元の時と同じです。微小領域を取り出して、任意の斜面における垂直応力とせん断応力を力のつり合いの式から求めます。そこから、方向余弦(単位法線ベクトルの各成分)を未知数とした連立方程式(行列)に直します。
基本的に、方向余弦が全てゼロになることはあり得ないことから、明確な解を持つには係数行列の行列式がゼロになることがポイントです。行列式の計算方法は「サラスの方法」を用います。2次元の場合も同じです。
この計算の流れは「固有値問題」と同じです。今回で言えば、主応力が固有値と等価の意味を持ちます。固有値問題は材料力学に限らず、様々な工学の問題で登場する方法なので、この流れを理解しておくと他で登場した場合に慌てずに済みます。
最後に記載した3つの不変量ですが、これも座標変換に依存しない固有の値です。この点も理解しておくと良いかもしれません。
ミーゼスの相当応力
応力は成分表示できることから分かる通り、大きさと方向の2つの性質を持ち合わせています。一方で、ミーゼスの相当応力は方向を持たない物理量(スカラー量)であることが特徴です。
すなわち、多方向から複合的に荷重が加わるような応力状態において、1軸の引張りもしくは圧縮に投影した値と言えます。変形を総合的に判断する際に使われる物理量でもあります。
$${\sigma_{vm}=\sqrt{\frac{1}{2}[(\sigma_x-\sigma_y)^2+(\sigma_y-\sigma_z)^2+(\sigma_z-\sigma_x)^2+6(\tau_{xy}^2+\tau_{yz}^2+\tau_{zx}^2)]}}$$
もしくは、3つの主応力から下記のようにも表せます。
$${\sigma_{vm}=\sqrt{\frac{1}{2}[(\sigma_1-\sigma_2)^2+(\sigma_2-\sigma_3)^2+(\sigma_3-\sigma_1)^2]}}$$
ミーゼスの相当応力は材料の降伏理論(弾性変形から塑性変形に移行する基準について説明したもの)のひとつであるせん断ひずみエネルギー説(ミーゼス応力説)に基づいています。
この辺についてはまた後で説明することにします。
おわりに
今回は3次元の主応力について扱いました。固有値問題に関しては大学レベルの数学の知識になるので、初めての方も多いかもしれません。この辺は後で解説をしようと思います。
これまでは2次元の問題を主に解説してきましたが、3次元になると数式も複雑になります。3次元の問題を2次元に落とし込む「平面応力」と「平面ひずみ」の考え方がありますが、後に解説したいと思います。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。
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