【日常写真日記#22】標識
今は秋の初め、香川県の山中を歩いていると、落ち葉が地面を覆い始めていた。しかし、紅葉にはまだ早いらしく、木々の緑はそのままで、ただ葉が地面に積もっていくだけ。曇り空の下、光量も少なく、景色全体がどこか薄暗い。そんな中で、黄色い標識だけが異様に目立っていた。
この標識は、静かに訪れる危険を知らせているようで、人の気配がほとんどないこの場所で、その存在が不気味にも感じられた。人工的に作られた岸壁は、どこか冷たく、静かな威圧感を放っている。周囲には人影もなく、ただ風が木々の間を吹き抜けていく音が響くのみ。
山道の先に進むほどに、辺りは一層薄暗くなり、冷たい空気が肌に染みる。香川の気候のせいか、おかげか、秋らしい紅葉の色づきはほとんどなく、季節の移ろいがはっきりと感じられない。そんな曖昧な季節感の中で、この黄色い標識はまるで唯一の指標のように立ち続けていた。
「秋の山 ひとり佇む 標識よ」
人の気配がなく、自然と人工物の対比が際立つこの場所では、普段見慣れた標識さえも異質に映る。都会の喧騒とは無縁の静けさが、かえって心に不安をもたらすこともある。そんな感覚を味わいながら、山道を歩き続けた。
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