【読書記録】Vol.2|津村記久子『水車小屋のネネ』
「ああ、こんな本に出会えるから私は読書がやめられないんだ」と思える瞬間がごく稀にある。
そして間違いなく、『水車小屋のネネ』はそんな一冊だった。
読んでから数日経つが、まだ私の心は作品の中に漂っており、余韻で胸がいっぱいになっている。
差し伸べられた手を握り、絆が生まれ、その絆が手を差し伸べる理由になってつながれていく。良心で紡がれた絆は、温かくて眩しい。
私は周りの人たちに、手を差し伸べられる人になれているだろうか。
なめられないように、つけ込まれないように、いい人ぶってると思われないように。一枚一枚重ねていった自分を守る膜は、いつしか硬い殻になっていたと気づいた。
「自分はおそらく姉やあの人たちや、これまでに出会ったあらゆる人々の良心でできあがっている。」
当たり前のようで、一番忘れてはいけないことを思い出させてくれた作品。
何度も何度も読み返したい「おまもり」になった。