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【ひとり旅 #2】 ポロトコタンに響く歌声



静かな白老駅。

ウポポイまであと400メートル!



白老駅から徒歩5分ほどで、立派な施設が見えてきました。

迷うことなくウポポイに到着です。


異空間への誘い

エントランスゲートはモダンなコンクリート壁。


そこには北海道の動植物が描かれ、自然との調和を意識させます。


それがつづら折りの回廊内となり、ゆっくり歩みを進めると、幻想的な音楽と鳥のさえずりが聞こえてきます。

先ほどまでの「現実」が急に遠い世界に感じられ、まさに異界に導かれてゆくようでした。



視界が開け、目の前にそびえ立つのは、近代的な建築物『国立アイヌ民族博物館』です。

こちらは現在入館予約制。
事前にWeb予約しておいた時間が迫っています。

大きな荷物はロッカーに押し込み、身軽になったところで意気揚々と入館です。

エントランスの自動扉には、伝統的な美しいアイヌの模様が施され、この時点で既にうっとり。

展示室は2階。
エスカレーターで上階へ移動すると、開放的なホールと一面のガラス越しに広がる景色が視界に飛び込みます。

そこには庭園の緑とポロト湖。 

思わず窓辺に引き寄せられていきました。

ポロトとはアイヌ語で「大きな沼」という意味だそう。

霧雨によって、ほんのり霞んだポロト湖の景色があまりにも幻想的で、すっかりその光景に魅了されてしまいました。


自然光に包まれた明るいホールから、光を抑えた廊下を抜けメイン展示室へ。

空間の使い方が心象変化をうまく導いていくように感じられました。

ここはゆっくり歩みを進めながら、この世界に没入していくのがよさそうです。

カムイが出入りするための窓
アイヌの女性は口の周りに刺青を入れる


国立というだけあって立派な施設と展示の数々。

けれど、ウポポイ(民族共生象徴空間)については賛否両論あるようで、この施設について異論を唱える人がいることも承知しています。

このような立派な箱物が、政治的アピールのために利用されている側面も感じないわけではありません。

そして、先住民問題、歴史解釈、差別問題、動物愛護問題なども提起され、ただ美しいことだけに目を向けるべきでないこともまた然り。

けれど、
私は純粋にアイヌの文化や世界観が好きなのです。

衣服に刺繍された模様も、装飾品も、言葉も、歌の響きも、民話も、自然との向き合い方も、カムイとの共生、かかわり合いも。

ただただ、心惹かれ、魂が揺さぶられるのです。

動植物、自然現象、人間が使う道具にもカムイが宿り、この世界は人間とカムイとがお互いに関わりあい、影響を及ぼしあって成り立っているという信仰に基づいて暮らしていた人々。

それはアイヌだけではなく、日本、そして世界中に古くからある本質的な自然信仰そのものでしょう。

私たち人間は自然の一部であり、広い宇宙から見れば地球を構成する要素のひとつにすぎない存在です。

命も肉体も循環している。
たまたま今ここに「私」という形のご縁を得て、泣いたり笑ったり怒ったりしているにすぎません。

これはアイヌの精神性というよりも、仏教的な考え方かもしれませんし、色んなものがごちゃ混ぜになった私個人の感覚です。

その循環の中のひとつに熊の魂送りの儀式イオマンテも存在しているのでしょう。

根底にあるのは貪りではなく感謝と共生の精神性です。

どんなときも、起きている現象を表面的に見て一喜一憂するのではなく、その根底にあるものを見つめることが大切だと感じています。

美しい歌声

ウポポイには伝統的なチセ(家)が数件あり、その中では様々な催しが行われています。

その一つとして、紙芝居の演目がありました。

子供にもわかるような優しい物語りに、様々な声色と美しい歌声を添え演じられていました。

その歌声が、あまりにも美しくて!

空間全体に広がる独特のゆらぎが魂に共鳴し、心が震えました。


このYouTubeの歌はその時のものとは別のものですが、 雰囲気をお伝えできるかと思います。
宜しければどうぞ。


ポロト湖畔にて


その後、ポロト湖畔をしばらく散歩しました。

「湖」との名前を持ちますが、アイヌ語の語源の通りそれは沼なのでしょう。

大きな湖だと、ザブンザブンと波が立つ場合もありますが、ここはとにかく静かな水辺です。

雨上がりの雰囲気も手伝って、湖の岸辺には神聖な空気が漂っていました。

多くの人が行き交う施設でありながら、やはりここの空気はシーンと整ってます。。

ここに先人たちがコタン(村)を形成したのも頷けます。

この景色の中でくつろいでいると、野鳥のさえずりが耳に届きました。

先ほど聞いたチセでの歌声とシンクロするような響き…

ああそうか。

こうして自然に身を置き、カムイでもある鳥の声や風の音を全身で感じ、それを自らの肉体から奏でようとしたことで、あの歌声は美しく、神聖な響きと揺らぎを放っていたんだなぁ…

小さな気づきが、大きく心を揺らしました。


「ハルランナ!」

ふと時計を見ると14時。
すっかりお昼を過ぎています。

ウポポイ内には数店舗食事が楽しめる場所があります。
そのひとつ「ハルランナ」という名のレストランに入ることにしました。

「ハルランナ」とはカムイ(神)とアイヌ(人間)が一緒になって「ハルランナ!」(食べ物が降るよ!)と楽しむ行事だそう。

店内の雰囲気も素晴らしく、食べる前から「美味しい」確定です。

このお店では3種の肉のローストを楽しむことができるのですが…

白老牛か、ラムか、エゾシカか・・・

それが問題だ!

そらA
「せっかく北海道が誇る牛肉の名産地白老に来たのだから白老牛を堪能したい!」

そらB
「いやいやここは迷わず大好きなラムを!」

そらC
「いいーや、稀少なエゾシカの味を確認したい!」


心の中で繰り返すこと数ターン。 

いっそのこと3種いってしまえ!

いやいや、食べ過ぎだよね…

と、まぁ心の中で激論を交わした結果、肉一種を選べなかった私は白老牛とエゾシカの合い挽きハンバーグをチョイスしました。
(いや、エゾシカの味わからんやん・・・)

添えられたスープはとうもろこしが優しく香り立ち、パンは燻されたオイルがじゅわーっと染み込み、スモーキーさがたまらない。
素朴に見せつつ、奥行きが半端ない。

これは絶品!!!!

ハンバーグはお肉の味が濃く、ギュッと赤身の肉が凝縮したタイプで。ハンバーガーにするとさらに本領発揮できるだろうと思わせる食べ応えでした。

これまた絶品!!!

この肉々しさはエゾシカのなせる技でしょうか。
やはりいつか単品でエゾシカの味を確認しなくては!

ハルランナ。
いつかまた訪れたいと思わせてくれるとても素敵なお店でした。

最後にお土産を物色。
驚くほど(失礼!)どれもセンスよく、あれもこれも欲しくなってしまいます。

やるな、ウポポイ!

こんなマジックにかかると、実物大の木彫クマも買ってしまうのだろうか・・・ガオー!

今回もここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。

ウポポイが気になっていたよ、という方には是非いつの日か訪れ、全身でその空気を感じて頂きたいと思います。

ウポポイのすぐお隣には、星野リゾートの界ポロト
もあるそうです。

いつかここにも行ってみたいな。

それではまた。

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