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【欧州ひとり旅】それでも惹かれてしまうのは、

 初めてここを訪れた時、正直がっかりしたことを覚えています。広場を囲む歴史ある建築の数々はたしかに美しいのですが、地面のタイルのあいだに敷き詰められたタバコの吸い殻、あふれる観光客、そして物乞い。かつてフランスを治めたナポレオンが、「世界一美しい広場」と称賛した、サン・マルコ広場。「いまナポレオンがこの光景を見たら、それでも『世界一美しい』と言うのかな。」初めてここを訪れた時のわたしは、およそそんな感想を持ちあわせていました。
 さて、その後わたしは、この広場を3回も訪れることになります。そして今回が、4度目。「え、がっかりしてたんじゃないの?」って、1度目に訪れたわたしは言うでしょう。ええ、4度目に訪れたこのわたしも、まだ少しそう思っています。でもどういうわけか、わたしはここを気に入ってしまったのです。
 今回も、やはり迷いました。ローマ広場近くのホテルから、1時間は歩いたでしょうか。細い小道をいくつも抜けて、アカデミア橋を渡って、そしてサン・マルコ広場へ。ベネチア本島という迷路のゴールと言っていいような、そんな広場です。
 歩きながら、なぜわたしはこの広場が好きなのか、考えていました。広場へ抜けた時の開放感、圧倒的威厳をみせるサン・マルコ寺院、美しくも可愛さを兼ね備えたドゥカーレ宮殿、300年以上の歴史を持つカフェフローリアンのあたたかさ。広場を構成するあらゆるものの存在に、ひとつとして無駄がないのです。
 そしてこの広場を構成する一番の存在である「人」。貿易商人から観光客へ、ナポレオンの時代から「人」の属性は変わったかもしれませんが、しかし「活気」や「交流」みたいなものの度合いは、およそ昔と変わりないないんじゃないかな、って。いまこうして広場の真ん中に立つわたしは、360度の「表情」「声」「動き」「呼吸」なんかに、とってもわくわくしています。
 きっと5度目もあるんだろうなって、わたしにとってサン・マルコ広場は、そんな感じ。

in Venezia, Italy Jan.2023
Leica Ⅲf × Kodak GOLD 200

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