【地中海ひとり旅】商売上手の店主

　ビーチの入口付近にある、オレンジュース屋さん。陽気な店主がひとり、ひたすらオレンジを搾っています。

　「あんたも一杯どうだい。美味しいぞ」露店をのぞき込むわたしに店主はそう言いましたが、少しでも節約をしたかったわたしは、我慢することにしました。実際、少し高かったですし。

　「まあいいさ、あと10分後くらいにはきっと飲みたくなるぞ」店主の言葉を背中で聞いて、わたしは目的のビーチへ向かいました。

　悔しいことに、「10分後くらいにはきっと飲みたくなるぞ」という店主の言葉を、わたしはたった5分で理解することになります。だって、ビーチにいる皆が、あのオレンジュースを飲んでいるのですもの。とあるおねえさんは、ビーチパラソルの下で寝転がりながら。とあるお兄さんは、サーフボードを片手に。わたしだって、この楽天的なビーチの下で、オレンジュースを飲みたい。

　結局7TNDを支払って買ったオレンジュースを、フィルムカメラを片手にちゅるり。どうですどうです、わたしもいけてるでしょう？それにしても、わたしがお店に戻ってきた時の店主のドヤ顔ったら。なんか、なーんかですが、でもオレンジュースはとっても美味しいから、まあいいや。

⁡地中海ひとり旅日記より抜粋
in Sidi Bou Said, Tunisia Feb.2024

ずっと口笛を吹いている、オレンジジュース屋の店主