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記事一覧
【台湾ひとり旅】手の付けられていない料理
わたしがこのレストランの入口で並んで待っているおよそ15分のあいだ、たしかに、あの料理は誰の手も付けられませんでした。
一番奥の、端っこの席に、銀色のお皿に盛られたその料理について、入口からの距離では名前など分かりませんでしたが(いやら、近くで見ても分からなかっただろうと思いますが)、窓からの光に照らされ立つ湯気からは、きっと美味しいであろうことは予想できて、「わたしも席に着いたらあの料理を
【地中海ひとり旅】カルタゴの活気
これまでのひとり旅において、これほどまでに「危険」とか「物騒」という言葉の似合う瞬間には、なかなか出くわさなかったと思います。"瞬間"というには、1時間ちょっとの鉄路は長く遠いものではあるのですが、"あっという間"という表現を書く際のペンが気持ちよく旅日記帳をすべるにつけ、やはりそれは、瞬間の出来事でした。
空調の効かない蒸し暑い車内からわたしを救おうとせんのは、皮肉にも、ガラスの割れた窓と
【北イタリアひとり旅:第2章】Ep.7/15-c 『心地よさの確認として』
ブラーノ島に到着したわたしは、まずひと通りこの島を歩くことにしました。ひと通りといっても、30分もあれば一周できてしまう大きさの島であることは分かっていましたから、大したことではありません。リュックからコンパクトフィルムカメラを取り出して、あと、昨日寝台特急でもらったお水も。
ブラーノ島を訪れることは、実はわたしにとって「旅」とは言えません。どちらかというと、旅の間の「小休憩」とも言えるでし
【北イタリアひとり旅:第2章】Ep.7/15-b 『ふたりのヴェネチアン』
自惚れているかもしれないけれど、間違いなく、5度目のヴェネチアはわたしを歓迎してくれているのだと思います。寝台特急がヴェネチア・サンタ・ルチア駅に定刻どおり到着したことも予想外でしたが、まさにいま日が出ようとせんばかりの頃に、カナルグランデを一望できるスカルツィ橋の真ん中に立つことができたのですから、寝台個室の硬いマットレスに文句を言っている場合ではありませんでした。
カメラのダイヤルをカチ
【北イタリアひとり旅:第2章】Ep.7/15-a『ほら、そのカメラは』
朝5時すぎだったと思います。個室の扉が2、3回ノックされて、7月15日の始まりは、まさにそのノック音とともに始まりました。眼の焦点も合わぬまま扉を開けると、昨夜少し話をした車掌さんが立っています。クロワッサンやオレンジジュースなんかが無造作に並べられた、朝食のプレートを持っていました。
“Buon appetito!(召し上がれ!)”
寝起き数分で言い渡されるその言葉と朝食の匂いに、小学
【北イタリアひとり旅:第1章】Ep.7/14-d『トリエステ行きの寝台特急』
乗る予定の寝台特急がまもなくホームに入線するという頃、わたしはというと、ローマテルミニ駅の2階を彷徨っていました。テイクアウトでなにか食べ物を買って、車窓からの景色に夜のイタリアを想い、寝台個室で食べようというのです。
故障したエスカレーターの脇に、ハンバーガー屋さんを見つけました。お店の雰囲気が、いつかみたハリウッド映画に出てくるそれのようで、映画のワンシーンを意識してシャッターを切ってみ
【地中海ひとり旅】きみとはもう二度と
「じゃあ、きみとはもう二度と会わないかもしれないわけだ」
キッチンカーのおじさんは、たしかにそんなことを言った気がします。あまり寂しいことは言いたくなかったのですが、わたしは「そうかもしれませんね」と答えるしかありませんでした。
せっかく時間もあったので、地図を見ずにこの島を歩いてみようと決めたことを、後悔はしていません。マルタに来てからというものの、食べているものは、カロリーの高いもの