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ロシアからの日記。 第5話。匿名抗議の意味がありますか? (サンクトペテルブルク旅行からの印象)


ロシアでは今、反戦の意見を表明する安全な方法があまり残っていません。デモ活動はもちろんのこと、SNSで書いた記事と押された「好き!」マーク、着ている服装 (例えば、黄色いズボンと青いセーターの組み合わせ)、黄青のマニキュア、木の枝に括り付けられた緑色のリボンや反戦立場の他の無邪気な表れも、行政法的や刑法的な刑罰をもたらす可能性が非常に高いです。なので、いくら戦争に反対であっても、多くの場合、黙って戦争の終わりを待つしかできません。

でも逮捕されるのが嫌のに、黙ってもいられない者がいます。そのような人達は街頭で反戦のポスターとステッカーを張って、落書きを書いて、チラシを配って、多様な匿名反戦扇動に参加しています。そしてそのような匿名抗議の証拠を集めて、広めて、新しい参加者に向けられた色々な説明とアドバイスを記載しているいくつかのSNSチャンネルがあります。例えば、Kitというロシアの独立メディアによると、戦争の始めから«Видимый протест» (ビーディミー•プロテースト/ 見える抗議) という SNS チャンネル (Telegramメッセンジャー)へ、ロシアの130集落に住んでいる9000人以上はそのような活動の写真を送りました。

多分、匿名反戦扇動に参加している人達の間にも、そのような活動は戦争を止めれると思っている人間がいないでしょう。でも、そもそも、そのような活動の目標と意味は戦争を止めることと違っています。色々な専門家と活動家によると、街頭での匿名抗議は、公式視点と異なる視点を表明できるスペースを作って、自分の意見を伝えたい人を行動させます。その上、戦争を悲劇として認識している人達は、自分が抱いている思いを他人が発揮したのを見て、ちょっとだけでも孤立感から解放されて、もしかすると時間が経って、そのような活動家の数に入るかもしれません。そして追い追いそんな活動はわずかでも、世論へ影響を与え始めます。

匿名抗議について述べている専門家と活動家の意見を読んで、「ディストピア化していくロシアでは、塀に書かれた落書きとバス停に張ったポスターも大切でしょう」と思い始めました。

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戦争の始めから、反戦ストリートアートと街頭で残された落書き、ポスターと他の形で体現された反戦のメッセージについて私がよくインターネットで読んでいます。そして戦争の始めから、毎回どこかへ出かけるついでに、周りに何かの反戦メッセージかあるかどうかをちゃんと調べています。(でも私は今育児休暇中ですから、そのような機会がよくあると言えません)。しかし、2月24日から私が訪れたモスクワの地域では、匿名反戦抗議の表れが見つけたのはただ1回だけでした。

Stop Adolf Putin • Peace! / アドルフ•プーチンを止めて • 平和!

勿論、私の観察の長さ、頻度と選ばれたルートの面から見れば、その結果は主観的過ぎです。そしてSNSチャンネルからの写真によると、モスクワ人は街頭でとても活発な匿名反戦抗議活動を行っています。しかし、ポスターを剥いだり、落書きを塗り消したりする警察と市当局の労働者の反応は非常に素早いです。

でも今日、述懐したいことはモスクワではなく、サンクトペテルブルクで出会した匿名反戦抗議からの印象です。

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今年の6月カザフスタンから来た友達と一緒に5泊4日でサンクトペテルブルクに行きました。旅行の目的は友達にその都市を見せることであったから、あえて反戦活動に関わる地点を探しませんでした。訪れたのは主にサンクトペテルブルクの名所と人気スポットでしたから、何の反戦落書きとかを見つけられると推測しませんでした (市当局と警察はちゃんと監視するはずだ、と思って)。なのであの4日の内に、サンクトペテルブルクのいくつかの人気なところで反戦落書きを見つけたことにちょっと驚きました。

その落書きのいくつかはサンクトペテルブルクのワシリエフスキー島という地域にある、サンクトペテルブルクのもっとも小さい中庭の壁に書かれています。その中庭にまつわる色々なミスチック的な都市伝説があって、その場所は民間に「幽霊の中庭」と呼ばれていて、旅行客の間に人気です。

「幽霊の中庭」

中庭の中に願い事をしたら、必ず叶うと言われています。なので中庭の壁に沢山の願い事が書かれています。その一部は戦争に関連しています。

赤い落書き: Все желанию сбылись, особенно тут! / 全ての願い事が叶った、特に、ここに!
下の黒い落書き: Мир Украине! / ウクライナに平和を!
Пусть будет мир на всей Земле / 地球全体が平和でありますように
Чтобы война the end / 戦争がTHE END [終わる]ように

ワシリエフスキー島ツアーのルート上に、もう一つの落書きを見つけました。

Hate cops • Save love • Fuck war / 警官を憎め • 愛を救えろ • 戦争をファックしろ

「Пробирочная (プロビーロチナヤ/試験管所」というサンクトペテルブルクの最も独創的で、人気なバーの一つの前でも反戦スローガンがありました。

パイプに書かれたスローガン: Нет войне / 戦争にいいえ

そしてヴィボルグというサンクトペテルブルクの北西にある都市では、もう一つの落書きに出会しました。それはヴィボルグ城という、13世紀にスウェーデン人によって建てられたヴィボルグのもっとも有名な名所に導くウォーターフロントにありました。

Говорил Иисус к народу и сказал им: Я свет миру, кто последует за мною, тот не будет ходить в тьме, но будет иметь свет жизни. (Иоанна 8:12) • Z - тьма. [🕯️の上にある♥️の絵] - свет / 「私は世の光である。私に従う者は暗闇の中を歩かず、命の光を持つ。」(ヨハネ8:12)• Zは暗闇である。[🕯️の上にある♥️の絵] は光である
Z - Тьма / Zは暗闇である (ウクライナ侵攻の支持者は「Z」のマークを用いて、侵攻の支持を表明しています)

上の写真の全部は、サンクトペテルブルク旅行で思わず見かけた匿名抗議の例で、それみたいな匿名抗議の新しい証は毎日ロシアの色々な都市と町の街頭で現れています。そして塗り消されて、剥がされて、消えています。

「そのような落書きは何も変えられなくて、役に立たない」と思う人もいるでしょう。でも私がそんな落書きをインターネット上ではなくて、自分の目で見た毎回、「ああ、この社会では、反戦の立場を取っている人が残っている、そしてその数が少なくないでしょう。この社会は完全に狂うってこなかったから、国の未来はまだ葬られていない」みたいな考えが浮かびました。そして落書きを書いた未知の人へ感謝の気持ちを強く感じました。

この経験のおかげで、匿名反戦抗議は少なくとも、同じ考えを抱いている人達へ正に心理的なサポートみたいな影響を与えることを実感しました。これだけに基づいて、そのような活動は無駄じゃないと思っています。でも、それに止まらず、時間が経って、全ロシアでは街頭の壁の声が大きくなって、人口の一部から無視しにくくなるかもしれません。少なくとも、今迷っている人の認識をもっと広くしたら、いいな、と思っています。そうなるように!

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