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私がレヴィナス『全体性と無限』を読むまでに読んだ本
ひとまず通読したので。
かなり個人的な関心と文脈でレヴィナスを読んでいるため、あまり参考にはならないかもしれない。レヴィナスの入門書どころか現象学の入門書さえ読んでいないほどの貧弱な読書歴でも読み通せるよという記録として。
哲学入門
永井均『翔太と猫のインサイトの夏休み』
私はこれを読んで哲学とは何かを初めて知った。全編必読。
哲学の基礎知識ということであれば、西洋哲学史全体の大雑把な理解も一応あると良いかも。適切な本は知らないけれど。岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』とか昔読んだ記憶がある。
デカルト
永井均『転校生とブラックジャック』
最初の方にデカルトについての章がある。後半も面白い。特に終章の青い鳥の話は必読。デカルト自身の著作は方法序説の前半しか読んでいない。
レヴィナスは「他者」の哲学者とも呼ばれるが、「私」というものについてもかなり踏み入って考察していて、その上でデカルトのコギト論は大事。
フッサール
富山豊『フッサール:志向性の哲学』
デリダ『声と現象』(拾い読み)
レヴィナスは哲学における超越論的営み一般を批判する。それを理解する上では、各哲学者の個人的思想を細かく理解するよりも、彼らの間で通底する超越論的発想というものの肝を把握するのが大事。
富山の本はフッサールの志向性概念を分析哲学の道具立てで再解釈するという試みであり、超越論哲学及びそれを現代的に再定式した真理条件意味論の勘所がよくわかるので非常におすすめ。終章でカントも少し出てくる。
デリダ『声と現象』はレヴィナスとも通ずる超越論哲学批判の書。ただデリダはこれをフッサール自身のテキストに深く分けいって行うので、難易度が高い。でもすごく大事な本。「私」という語を使うのに「私」という語が指し示す対象の直観は必要ない、という箇所は必読。
(ハイデガー)
武田青嗣『ハイデガー入門』
武田のせいかハイデガーのせいか知らんが恐ろしくつまらないのでざっと流し読みしただけ。レヴィナスはハイデガーの批判者と言われるが、別にハイデガーの哲学に深く入り込んでそれを内在的に批判しているというわけでもないので、あまり詳しく知る必要はないと思う。
ウィトゲンシュタイン
永井均『ウィトゲンシュタイン入門』
『哲学探究』(拾い読み)
レヴィナスの哲学はウィトゲンシュタイン哲学とも通ずるところがあると思う。だからウィトゲンシュタインを理解することはレヴィナスの理解にも寄与すると勝手に感じている。
入門書だったらどれでも良いと思うのだけど、私は永井のものしか読んでいない。
ウィトゲンシュタイン自身の著作について、前期の主著である『論理哲学論考』は特殊な体裁に尻込みして手を出せていないけれど、後期の主著である『哲学探究』の方は一部拾い読みした。カブト虫の比喩は必読。あと中期『青色本』のチェスの駒に冠を被せる比喩も必読。
アリストテレス
山本芳久『100分で名著:ニコマコス倫理学』
西洋哲学が全てプラトンの注釈なのだとしたら、西洋倫理学は全てアリストテレスの注釈である。
現代倫理学
永井均『倫理とは何か』
ウィリアムズ『生き方について哲学は何が言えるか』
マッキンタイア『美徳なき時代』
どれも現代倫理学に何らかの意味で批判的な現代倫理学の概説書なのだが、それ故に学べるところが多い。レヴィナスを読む上で特に重要なのは、カント、ロールズ、ヘアに代表される契約主義や普遍化可能性の議論。それと行為やインテグリティを巡る議論も大事。難易度は永井の本が一番低く、他二つはやや高め。難しく感じるなら他の入門書(『動物からの倫理学入門』と『メタ倫理学入門』がおすすめ)を読んでからがいいかも。
あとは、価値論としてラズ『価値があるとはどのようなことか』、行為論として黒田『行為と規範』も読んでいて、どちらも万人向けの本ではないかもだけど私にとってはレヴィナスを理解する上で重要な著作。
レヴィナス
ドムナック『政治宣伝』
デリダ『アデュー』
リオタール『レヴィナスの論理』
レヴィナス『全体性と無限』
ちくま学芸文庫版『政治宣伝』の訳者解説を読んで私はレヴィナスに関心を抱いた。本文は読んでいない。
私がレヴィナスを読むにあたって直接の導入としたのは、ちょうど出版されていたデリダ『アデュー』とリオタール『レヴィナスの論理』の2冊。デリダの本はレヴィナスが何をしたいのかをよく捉えていると思う。リオタールの本はややテクニカルで前半しか読めていない。
以上を経てついに、私は『全体性と無限』を読んだ。全てを完璧に理解したとは到底言えないが(特に第4部)、それでもレヴィナスが何を語ろうとしているのかは理解できたつもりだし、何より十分に楽しんで読み切ることができた。
次は、リクール『別様に』を経由して、『存在の彼方へ』を読む。