うまく・はやく・つよく「交雑育種」とは?
育てるを育てる。AQSimです。
もう6年前になりますが。
こちらの画像をご存じの方はいらっしゃるでしょうか?
ブドウの家系図。
あのブドウとあのブドウが掛け合わさってあのブドウが出来ていたんだなぁ、そのブドウとあのブドウがさらに掛け合わさってこのブドウが出来たのかぁ、そのブドウとこのブドウでどのブドウになったんだろう。ブドウとブドウでブドウが作られて、ちがうブドウ同士を掛け合わせると子のブドウはまたちがうブドウになるんだなぁ…と。
ブドウの品種の多さ、家系図の複雑さ、そしてそのキャッチーな表現方法から話題となりました。
この家系図に象徴されるように、
より美味しい、より強い、より育てやすい食べものを生み出すために、私たち人間は特徴の異なる品種同士を掛け合わせています。
こうして私たちにとってより有益な種をつくることを、
「交雑育種」といいます。
ブドウに限らず、桃でも、リンゴでも。
果物に限らず、野菜でも、穀物でも。
植物に限らず、牛など畜産物でも。
交雑育種は私たちの生活の側にあるのです。
もちろん、魚でも。
魚の交雑育種は何のため?
魚を養殖する場面でも、交雑育種による品種改良の事例がいくつも見られます。それは何を目的したものでしょうか。
基本的には農業・畜産業での目的と同じと言えます。
より美味しい魚にして、高級品として売り出したい。
より早く育つ魚にして、出荷までのコストを減らしたい。
より病気に強い魚にして、生産量の安定感を高めたい。
適応できる環境の範囲を広げて、育てる場所を拡げたい。
つまりは、ウマいハヤいツヨい魚が出来れば商品としてイイね!ということですね。魚を育てて収穫するという見方もできる「養殖業」ですから、農業や畜産業と同じような努力をしていることは不思議ではありませんね。
どんな品種がいる?
いくつか、実際に育てられていて商品化もされている品種をご紹介します。
クエタマ/タマクエ
美味しくて高値で売れるハタ科魚類「クエ」。ぜひ養殖したいけれども、成長が遅すぎて採算が取れない、リスクが大きいという課題がありました。
研究により、南の海に生息するハタ科最大の「タマカイ」と交雑することでタマカイの成長スピードとクエの美味しさを併せ持つ「クエタマ/タマクエ」が生み出されたそうです。お互いの(人間にとって)良いところが合体された魚ですね。…食べてみたい。
ブリヒラ
「ブリヒラ」は、ブリとヒラマサの交雑種。ブリのうまみ×ヒラマサの歯ごたえを兼ね備えた美味しい魚としてアピールされています。
美味しいだけではなく、「変色しにくい」「身質が維持される」といった、生食するには足が早いという青魚の懸念点をクリアする特徴も持っています。自然界でもヒラマサは誕生することがありますが、狙って大量に漁獲するということは難しい。養殖であればそれもクリアできるということです。
懸念されること、そして対策
交雑育種によって生まれる魚は、天然には存在しない生き物となる場合があります。(場合があると言ったのは、生息範囲が重なっていると自然界でも近い種が交雑することがあるためです。)
ですので、もし自然界に逃げ出して繁殖をしてしまった場合や更なる交雑を起こしてしまった場合、本来起こり得なかった生態系の変化が起きる恐れがあることは否定できません。
だからこそ、生産者はこうしたリスクを考慮して、生殖能力の低い品種にしたり、自然界への流出が起こり得ない環境で飼育したりと工夫を凝らしています。
また生産方法で対策をしているのであれば、そうしたリスクを懸念して消費を躊躇する消費者もいるだろうと想定し、イメージの誤解を払拭していくことが重要になるかもしれません。
生産者としての視点でも、消費者としての視点でも。
重要なのは字ズラやイメージだけで良し悪しを判断するのではなく、どんな良さやどんなリスクが含まれているかを理解したうえで適切に生産する・判断することですね。
まとめ
「交雑育種」は品種をかけ合わせより良い品種をつくる
養殖魚にも例があり、課題解決方法の1つとされている
自然への影響など、リスクは正しく理解し判断したい!
交雑育種の他にも、より良い品種をつくるための方法は、ゲノム編集や選抜育種というやり方があります。こちらについても今後記事化するかもしれません。
例のごとく、導入的な部分をご紹介している記事ですので、交雑育種についてこんな話もあるよ!こんなことも考慮した方がいいよ!というご意見がある方はぜひコメントで教えてください。
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