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投げ銭する人の動機とは?
戦略コンサルタントのアップルです。
今回のエントリーのテーマは「投げ銭」です。
最近ライブ配信サービス等で市民権を得つつある「投げ銭」。日常的にも良く聞くようになりました。しかし、投げ銭する人の”動機”については、必ずしも良くわからない部分があるのではないでしょうか?そこでちょっと調べてみたところ、投げ銭の動機に関するアンケート調査結果を見つけました。その結果も引用しつつ「なぜ人は投げ銭するのか?」について軽く考察してみましたので、ご興味ある方はご覧くださいませ(投げ銭は「贈与経済」という大きなテーマにもつながる話だと捉えており、今後も折をみて深掘りしてみようと思っています)。
noteで初めて投げ銭を頂いた話
noteユーザーの方はご存じでしょうが、noteには「サポート」という機能があります。これはいわゆる「投げ銭」の機能で、読者がいいと思ったコンテンツに対して100円から贈与することができます(詳しくは下記をご覧ください)。
noteの記事の末尾に下図のようなアイコンがあるかと思います。ここから投げ銭ができます。
この機能があることはアップルもかねてより認識していましたが、これまで一度もサポートを受けたことはありませんし、受けることを期待もしていませんでした。そうした中、本日初めてサポートを受けたのです(とある無料記事に対して500円の投げ銭を頂きました。投げ銭頂いた方(ご覧になっているかわかりませんが)ありがとうございました!)
想定外ではありましたが、投げ銭をいただいて単純にうれしかったです。今後も良い記事を書いていこうという励みにもなりました。
こうして人生初の投げ銭を頂いたことが、投げ銭の動機について考えるきっかけとなりました。
アップルは投げ銭/寄付をしたことが皆無
ではアップルは投げ銭をしたことがあるのかと言われれば、お恥ずかしながら?皆無です。寄付もほとんどしたことはありません。人生を振り返ると、赤い羽根募金やコンビニやスーパーにおいてある募金箱に10円玉や100円玉を入れたことが何度かある程度です。
なぜ投げ銭や寄付をしないかと言われればする動機がないからです。しかし世の中を見渡せば、投げ銭や寄付を積極的に行う人たちが(少数派だとは思いますが)一定数存在します。日本は寄付文化が弱いと言われますが、欧米では寄付が活発に行われています。もちろん節税目的といった経済合理的な動機もあるでしょうが、それ”以外”の動機もあるから積極的に投げ銭や寄付をする人たちが存在するのでしょう。
そうすると次の問いが気になります。
「寄付や投げ銭をする人は、いったい何が動機でやっているのだろうか?」
投げ銭の対象は個人で寄付の対象は社会なので異なる側面もありますが、「身銭を切って誰か/何かに贈与したいという欲求」が根底にあるという点では共通です。アップルのように投げ銭や寄付に対する感度が低い人間からすると、投げ銭・寄付をする人の動機は何なのだろうかということはとても興味深く思えたのです。
投げ銭の動機に関するアンケート調査の結果
そこで(寄付はここでは横に置いておき)投げ銭についてのアンケート調査をググって調べてみました。するといくつか出てきました。その中でドンピシャの「投げ銭の動機や理由」を質問したアンケートを見つけましたので、その内容をご紹介するとともに、若干の考察を加えてみたいと思います。
今回見つけたのは三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめた「ライブ配信サービス(投げ銭等)に関するアンケート結果」(2018年12月)です。同調査の中でライブ動画配信サービスにおいて有料アイテムを提供する(=投げ銭する)理由を調査しています。調査結果は以下です。
上位6位までの理由を少しかみ砕いてみましょう。
①配信内容に満足したから(利己的)
コンテンツの対価として投げ銭するもの。「これだけ価値のあるコンテンツなのに無料というのは申し訳ない」という心理が働いた結果、その対価に見合う(と考える)金額を投げ銭するというメカニズムです。コンテンツの対価なので、その目線は利己的と言えるでしょう。
②配信者に喜んでもらいたいから(利他的)
配信者に対する応援や共感の心理が背景にある投げ銭。「相手のために」という想いが根底にあるため、利他的な動機と言えます。
③配信を盛り上げたいから(利他的)
投げ銭によってライブを盛り上げたいという動機。これも「盛り上がることによって相手に喜んでほしい」という利他的な動機と言えます。
④配信者が継続的に活動できるよう支援したいから(利己的+利他的)
自分が投じた投げ銭が、配信者の活動資金の一部となり、ひいては配信の継続性が担保される。それによって配信者のコンテンツを楽しめる期間が長くなることが期待される。こうした動機に裏付けされた投げ銭がこれです。「相手のために」という利他性もありますが、どちらかと言えば「自分がもっと長くこのコンテンツを楽しみたい」という利己性の方が強いと言えるでしょう(そういう意味で、利己的+利他的と利己を前にもってきています)
⑤他の配信者が贈っているのにつられたから(-)
自身の意思ではなく周りに流された結果としての投げ銭。自身の明確な動機はないので、他の理由とは一線を画しています(利己的でも利他的でもない)。
⑥配信者のランキング等を上げたいから(利他的+利己的)
所謂「推しメン」に対する支援・応援としての投げ銭です。AKB48のファンが推しメンのCDをたくさん買って支援するのと同様に、自身と半ば同一化した推しメンの承認欲求を満たすために金銭を投じるという動機です。疑似承認欲求を満たす行為とも言えるでしょう。疑似承認欲求というのは利他的であり利己的でもある気がするため、利他的+利己的な動機と整理されるべきと考えます。
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このように投げ銭の主な動機をかみ砕いてみると、投げ銭の動機には利己的か利他的かという軸があり、その軸の中で動機がばらついていることが窺えます。図にすると以下のようなイメージです(コンサルっぽく2軸にしたかったのですが、利己的⇔利他的以外にさしたる軸が思いつかなかったため、1軸(1次元)のマップになっています。〇の大きさは当該動機の大きさ(アンケートの回答率)になります)。
このように投げ銭、そしておそらく寄付も動機にはかなり幅があり、同じような行為に見えても人それぞれ異なる動機で行っていることをまずは理解することが重要でしょう。
投げ銭や寄付を集めようとされている方は、そのことを理解した上で「どの動機に訴求するか」ということを戦略的に考える必要がありそうです。
noteの記事に置き換えて考えてみると?
上記はライブ配信サービスの投げ銭に関するアンケート結果ですが、これをnoteの記事に対する投げ銭に置き換えた場合どのようなことが言えるでしょうか?
まず⑤(他の人につられた)については、他人の投げ銭行為はnoteでは見えないため、論理的にあり得ないです。
また②(喜んでほしい)、③(盛り上げたい)、⑥(ランキングを上げたい)は、配信者が生身の人間として認知されていることや配信のライブ感が前提となる動機なので、これもnoteのブログでは動機になりづらそうです(アップルのように匿名・ハンドルネームでやっていると尚更でしょう)。
そう考えると、noteの投げ銭においてあり得る動機として残るのは①(内容に満足)と④(配信者を支援したい)です。つまり極めてクオリティの高い記事を書きそれに対する対価として投げ銭を得るか(①)、継続的に良質な記事を書くことでファンを獲得し一連の活動に対する継続性への期待として投げ銭を得るか(④)の大きく2パターンだと結論付けられます。
詰まるところ、「良質なコンテンツ」を「継続的に」配信していれば投げ銭は後からついてくる可能性があるし、逆にそうじゃなければよほどのことがない限り投げ銭はもらえないということでしょう。
今回はここまでです。冒頭にも書いたとおり、投げ銭や寄付といった「贈与経済」は今後の経済・ビジネスを考える上での一つのキーワードになる気がしておりますので、今後も関連する記事を書いていこうと思います。