Appleのデザイナーが作ったライカに見る“要素の目的を深く理解すること” (前編)
突然ですが、Appleのカメラと聞いて、何を思い浮かべますか?
おそらくiPhoneのカメラのことを思い浮かべる方が多いでしょう。
でもそれだけではありません。
例えば1997年にApple QuickTakeというカメラが作られています。
Jared C. Benedict
Macのアプリケーション「Image Capture」のアイコンにもカメラが使われています。
Apple
iOSやiPadOSのカメラAppにもカメラのシルエットが出てきますね。
でも、もっとAppleのカメラらしいカメラがあります。
Appleの元デザイナーであるジョナサン・アイブとマーク・ニューソンが共同でデザインした1点もののカメラのデザインです。
http://marc-newson.com/red-leica-camera/
まあAppleのカメラというか、Appleのデザイナーが作ったカメラですが。
このカメラが発表された当時はジョナサン・アイブはAppleのデザイナーでしたし、時期は前後しますがマーク・ニューソンもAppleに所属していたことがあります。
正式な名前は「(RED) Leica Camera」のようです。
今回はこのカメラのデザインを考えたいと思います。
なぜ外装だけデザインしたのか
このデザインのベースになったのは2012年のLeica M。
Leica
ベースモデルがあるということは、ジョナサン・アイブとマーク・ニューソンがやったのはカメラの外装を形作る作業だけにも思えます。
これを初めてみた時、正直な話、外装をApple風に置き換えただけじゃないかと思ってしまいました。
これはおかしいですよね。
いうまでもなくデザインは見た目を作るだけの作業ではないからです。ではなぜ外装をデザインしたのか。
これを考えるにはカメラの歴史を考える必要があります。と言っても、カメラについては私よりもこの記事を読まれているみなさんの方が詳しいと思いますので、深入りはしませんが。
カメラの歴史はピンホールカメラに始まり、感光材料による撮影ができるようになり、1920年代に小型カメラの先がけとしてLeicaが登場しました。この時点ですでに小型カメラにおける横長の長方形スタイルが登場していました。ちなみに今回のカメラのベースになったLeicaは、1954年発売のLeica M3にさかのぼるようです。
その後、デジタルカメラの登場もあり、カメラの形はさまざまに変化し続けますが、カメラの基本形は90年近くにわたり、Leicaによるこの横長の長方形であったといえます。
http://marc-newson.com/red-leica-camera/
こうした背景を考えれば、ジョナサン・アイブとマーク・ニューソンがLeicaのカメラをベースにして横長の長方形スタイルのカメラをデザインしたのはカメラの歴史を踏まえたものであることがわかります。
もちろんデザインにおいては、まだこの世に存在しない形態を提案するという側面もあります。
例えばAppleはトラックパッド付きのノートブックを生み出したことで有名です。それまではノートブックには画面とキーボードしかついていなかったわけです。当時はそれが基本形であったわけですが、Appleが新しいスタイルを提案したことで、それが新しい基本形となり現在に至ります。
ただ、今回のデザインはチャリティーオークションへの出品のための1点ものであることや、このオークションでは過去の優れたプロダクトデザインの出品もされていることに着目すべきでしょう。
新しいスタイルの提案をする場面というよりも、歴史を踏まえてデザインを考える場面であったのだと思います。
長いので後編に続きます。
後編ではより具体的なデザインについて検討します。
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