#ネタバレ 映画「ホテルローヤル」
「ホテルローヤル」
2020年作品
人は背景に染まって生きる
2020/12/10 9:49 by さくらんぼ(修正あり)
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)
稀有な「哀しいハッピーエンド」に、「ブラボー」とスタンディングオベーションする人がいたとしても同意できる。いや、本当は私がしたかった
令和2年の年末までに、まだ5本以上は映画を観に行きたいと思っているのですが、この映画「ホテルローヤル」を今年の見納めにしても良いなと、そう思えるような作品でした。
最初から、最後まで、しみじみ哀しいエピソードが連なっているのですが、ラストには不思議な希望が一筋さしているのです。
稀有な「哀しいハッピーエンド」といったところでしょうか、その不思議な味わいに、「ブラボー」とスタンディングオベーションをする人がいたとしても、同意できると思いました。
いや、本当は私がしたかったのです。
★★★★☆
追記 ( 人は背景に染まって生きる )
2020/12/10 10:04 by さくらんぼ
原作者の実家はラブホテル。裏の事情までご存じだからか、古い路地裏に入ったようで、妙に落ち着く。素人が短期間の取材で勉強したものとは、やはり違う
観ていて感じたのは、いい意味で中国映画みたいな泥臭さが、少しあることです。
それはどこから来ているのかと考えたら、原作者の桜木さんの実家がラブホテルだという事で、裏の事情を、裏の裏まで皮膚感覚でご存じだからだと思います。
だからでしょうか、古い路地裏に入ったようで、妙に落ち着くのです。
素人が短期間の取材で勉強したものとは、やはり何かが違うのでしょうね。
追記Ⅱ ( 映画「起終点駅 ターミナル」 )
2020/12/10 10:36 by さくらんぼ
映画「ホテルローヤル」も映画「起終点駅 ターミナル」も、「場違いな背景を甘受して生きる人間」を描いていた
大好きな映画「起終点駅 ターミナル」も桜木さんの原作だと知って、鳥肌が立ちそうになるほど感激しました。
映画「ホテルローヤル」も映画「起終点駅 ターミナル」も、「場違いな背景を甘受して生きている人間を描いていました」が、それは私の半生でもあり、だから刺さるのだと思います。
追記Ⅲ ( 人は背景に染まって生きる )
2020/12/10 14:37 by さくらんぼ
哀しみが支配する悲劇だが、ラストになって初めて、ヒロインは家業、そして初恋という牢獄から解放された
北海道の高台にある、ラブホテルの一人娘・雅代(波瑠さん)は、実家がラブホテルであることを嫌っていました。
私の青春時代も、若者はサラリとしたフォークソングは好きでも、ドロリとした演歌はあまり理解できませんでしたから、同じドロリとしたイメージのあるラブホテル稼業を、うら若き処女(たぶん)の乙女が敬遠するのは、当然と言えば当然です。
雅代の描く絵がフォーク系であることも、彼女の趣味を物語っていました。
そんな彼女は、一人娘なので跡を継がされてはたまらないと、東京にある美大へ逃亡を図りましたが、受験に失敗し、しかたなく北海道へ戻ってきたのです。
雅代が戻ったラブホテル、あいかわらず父はぐ~たらしておりましたが、しばらくの後、母は浮気をして出て行ってしまいました。
おかげで雅代は、恐れていた二代目に。
恐怖は現実になりました。
そこへ定期的にやって来るアダルトグッズ会社の販売員・えっち屋(松山ケンイチさん)の男は、雅代の子供時代からの初恋の人でしたが、告白できぬまま、しかし、恋も冷めぬまま、アダルトグッズ売りとラブホテルの女将という間柄に、そして、気がつくと、えっち屋さんは他の女と結婚してしまったのです。あ~最高の悲劇。
その後、いろいろあって、女子高生と先生の、(色恋沙汰ではなく)単なる雨宿りから始まった、微妙極まりない心中事件の余波で、ホテルローヤルは倒産してしまうのです。
倒産の後始末の終わり、在庫品回収にやってきたえっち屋さんに、雅代は「ずっとあなたが好きでした」と告白。そして、「最後にこのグッズを全部使って遊びませんか」と、淡々と言いました。
その言葉からは、自分は客としてラブホテルを使ったことが一度も無いこと、そして男性経験がなさそうな事、もちろんアダルトグッズを使った事も無いことなどが、分かりました。
「お別れするために、最後の望みを聞いてください」と言っていたのです。
お気に入りのバイブを一箱、大事に抱えてベッドへ向かう波瑠さんがシュールです。
それに答えようとしたえっち屋さんでしたが、「妻がいるから…」とHは出来ませんでした。「据え膳食わぬは男の恥」とか申しますが、誘った雅代も恥をかかされ傷つきました。しかし、その傷を、「正しい傷を一生の思い出に出来たと」、半分喜んでいたようです。
万感の思いで、倒産の後始末を終え、一人去っていく雅代は、途中に町へ寄り、思い出の街並みを見つめるのでした。
この物語は哀しみが支配する悲劇でしょうが、このラストになって初めて、雅代は家業、そして初恋という、(牢獄のような)しがらみから解放されました。
誰にも気兼ねすることなく、自由に世界へ羽ばたけるようになったのです。
追記Ⅳ ( これも「コロナ過」の作品か )
2020/12/10 17:35 by さくらんぼ
この映画「ホテルローヤル」も、コロナ過を描いていたのか
>万感の思いで、倒産の後始末を終え、一人去っていく雅代は、その途中に町へ寄り、思い出の街並みを見つめるのでした。
>この物語は哀しみが支配する悲劇でしょうが、このラストになっては初めて、雅代は家業、そして初恋という、(牢獄のような)しがらみから解放されました。(追記Ⅲより)
この映画「ホテルローヤル」も、コロナ過を描いていたように思います。
令和元年の喜びと、令和二年の哀しみ。
私たちは令和元年までを懐かしみつつも、令和二年からの新しいスタートに期待をするのです。
追記Ⅴ 2022.4.18 ( お借りした画像は )
キーワード「恋」でご縁がありました。秘めたる熱が伝わってくるような作品です。少し大きめな画像なので枠に合わせて自動的にカットされました。その後、花を中央にするために手動で上下しました。ありがとうございました。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)