冷え性と自律神経
この文献の概要
冷え性の定義: 冷え性は特別な基礎疾患がないにも関わらず、身体が冷えやすく、冷感過敏の状態を指します。特に女性に多く見られます。
病態生理: 冷え性の人は交感神経機能が亢進し、皮膚血流量が低下することが多いです。若年者では寒冷刺激に対する反応が過敏であることが示されています。
随伴症状: 冷え性の人は肩こり、疲れやすさ、頭痛、便秘、気分の落ち込みなどの症状を伴うことが多いです。
治療法: 食事療法、生活習慣の改善、物理療法、薬物療法などが推奨されています。
冷え性の定義
冷え性の定義: 特別な基礎疾患がないにも関わらず、身体が冷えやすく、冷感過敏の状態を指す。
頻度: 健常者における冷え性の頻度は、女性で約60%、男性で約20%。
身体的特徴: 冷え性のある人は体重が少なく、BMIも低い傾向がある。
随伴症状: 肩こり、疲れやすさ、頭痛、便秘、気分の落ち込み、腰痛、めまいなどが報告されている。
冷え性の疫学
女性に多い: 健常者における冷え性の頻度は、女性で52〜80%、男性で19%と報告されています。
年齢と頻度: 20〜30歳代では約20%、50歳代以上では50〜70%と、高齢になるほど頻度が高くなります。
親族内の頻度: 冷え性のある女子学生の約49.8%が親族にも冷え性があり、特に母親が冷え性持ちであることが多いです。
身体的特徴: 冷え性のある人は体重が少なく、BMIも低く、身体活動が少ない傾向があります。
冷え性の随伴症状と合併疾患
随伴症状: 冷え性のある人には、肩こり、疲れやすさ、頭痛、便秘、気分の落ち込み、腰痛、めまいやふらつきなどの症状が多く見られます。
合併疾患: 冷え性のある患者には、貧血、慢性胃炎、慢性鼻炎、変形性関節炎、生理不順、胃十二指腸潰瘍、低血圧、逆流性食道炎、関節リウマチが多いとされています。
循環器系疾患: 狭心症や糖尿病、高血圧、脳卒中などの循環器系疾患は、冷え性のある患者にはむしろ少ないと報告されています。
メタボリック症候群: 冷え性のある女性では、メタボリック症候群の合併頻度が有意に低いとされています。
冷え性の病態生理について
交感神経機能の亢進: 冷え性のある人は、交感神経機能が亢進し、皮膚血流量が低下することが多いです。これにより、皮膚温が低下し、冷感を感じやすくなります。
血管内皮機能の低下: 特に若年者では、血管内皮機能が低下していることが報告されています。これが冷え性の病態に関与している可能性があります。
寒冷刺激への過敏性: 冷え性のある人は、寒冷刺激に対する反応が過敏であり、手足の末梢血管が収縮しやすいです。
加齢の影響: 高齢者では、動脈硬化などの血管の老化や温熱中枢の変化が冷え性に関連している可能性があります。
冷え性に用いられる検査
非薬物療法: 体を温める食材(ショウガ、ニンニク、ネギなど)の摂取、ぬるめのお湯での長時間入浴、規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動、気候に合わせた衣類の着用が推奨されています。
物理療法: 温浴療法が推奨されており、特に高濃度炭酸泉による手足の部分浴が効果的とされています。
薬物療法: 血管拡張薬、ビタミンE製剤、漢方薬などが治療に用いられます。
まとめ
冷え性の概
医学用語の「冷え性」は、特別な基礎疾患がないにもかかわらず、手足の冷えや冷えやすいと感じやすい状態を指します。 これは西洋医学的な用語で、体質と考えられています。 一方、東洋医学では、「冷え症」は治療の対象となる症状の一つとみなされます。
疫学
健康な女性の約60%、男性の約20%に冷え性が見られます。
年齢を重ねるごとに頻度が高くなり、50歳代以上では50〜70%になります。
冷え性を持つ人の親族、特に母親にも冷え性が多い傾向があります。
体重やBMIが低く、身体活動が少ない人に見られやすいです。
症状
手足の冷えだけでなく、肩こり、疲れやすさ、頭痛、便秘、気分の落ち込み、腰痛、めまいなども伴うことがあります。
病態生理
冷え性の人は、そうでない人に比べて交感神経機能が亢進し、皮膚血流量が低下していることが、心拍数、心電図のR-R間隔変動の周波数分析、皮膚血流量測定などの結果から示唆されています。
若年者では、寒冷刺激に対する皮膚交感神経活動の増加反応が過敏であるため、皮膚血流量の減少に繋がっている可能性があります。
高齢者の冷え性には、動脈硬化など血管の老化や、温熱中枢の加齢に伴う変化も関与している可能性があります。
検査
冷え性を客観的に判断するために、鼓膜温と皮膚温度の差を測定する方法が考えられています。
一般的には、サーモグラフィーや接触型温度計を用いて皮膚温を測定します。
レーザードップラーを用いた皮膚血流測定や、足趾の血圧測定も用いられます。
治療
薬物療法としては、血管拡張薬、ビタミンE製剤、漢方薬などが用いられます。
非薬物療法には、体を温める食材の摂取や、規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動、適切な服装などの生活習慣の改善があります。
物理療法として、温浴療法、特に高濃度炭酸泉による手足の部分浴が効果的です。
年齢による冷え性と自律神経の関係性の違い
冷え性は、自律神経の乱れによって引き起こされることが多いですが、その関係性は年齢によって異なってくることが示唆されています。
若年者
若年者の冷え性の場合、寒冷刺激に対する皮膚交感神経活動の増加反応が過敏であることが、冷え性の病態形成に関係している可能性があります。
つまり、実際にはそれほど寒くない状況でも、過剰に交感神経が活動し、皮膚の血管が収縮することで、冷えを感じやすくなっていると考えられます。
また、若年層では、血管内皮機能の障害も冷え性の病態に関与している可能性があります。
高齢者
高齢者では、加齢に伴い皮膚交感神経活動の基礎活動が低下していく傾向がみられます。
また、動脈硬化など血管の老化や、温熱中枢の加齢に伴う変化も冷え性に関係している可能性があります。
これらのことから、高齢者の冷え性は、自律神経の過剰な活動というよりは、むしろ自律神経の機能低下や血管の老化などが原因となっている可能性があります。
年齢による違いのまとめ
若年者:交感神経の過剰な活動による血管収縮、血管内皮機能の障害などが関与している可能性
高齢者:自律神経の機能低下、血管の老化、温熱中枢の機能低下などが関与している可能性
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