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まなざしの構造 ― パウル・クレーと谷川俊太郎

 『詩と思想』10月号(Vol.3 №443、土曜美術社出版販売)に、谷川俊太郎詩集『クレーの絵本』(講談社、1995)についての小論を寄せています。
 機会がございましたら、お読みいただけると幸甚です。

病魔と闘う日々にあって、迫りくる死へのまなざしは、儚いいのちに、美しさを見出そうとしていたのではないか。この世に住みながらも、その背後の世界にある語り得ない何か ― おそらくは創造の真理 ― を、クレーは見つめている。

クレーのまなざしの先に、谷川は魂の住処を見た。そこはまた、詩の生まれる場所でもある。

クレーの絵に触発された詩は、いずれも平易な語彙を用い、ひらがなばかりで書かれている。けれども、読み返すたび、いのちの根源を見つめる詩人の鋭いまなざしに驚かされる。かけがえないいのちの重さと、ゆえにこそ、いのちが宿命的に孕む玲瓏たるかなしみとが胸に迫る。

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青山勇樹
あなたの心に、言の葉を揺らす優しい風が届きますように。光と戯れる言葉のきらめきがあふれますように。

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