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文豪も妻から見れば我儘っ子
名作「坊ちゃん」に描かれる松山でのいろいろな出来事、夏目家の親戚のこと、熊本での婚礼の様子から微に入り細を穿って語られる文豪・夏目漱石の日常生活。お見合いで出会ってから死別するまでを共に過した鏡子夫人なければ、垣間見ることのできなかった人間・漱石の赤裸々な姿を浮き彫りにする。鏡子が漱石と生活を共にした二十年間、一日も欠かさず漱石が狂気の沙汰を演じたわけではない。周期的に訪れた狂気の時のほうが遥かに短いのである。しかも自分は小説家だから、常軌を逸しても許されるのだとか、ものを書けないイライラを家族にぶつけてもよいのだという傲慢さや身勝手さを、漱石という人は微塵も有していない。(解説・半藤未利子より)
漱石の悪妻と言われる妻、夏目鏡子の口述筆記でNHKドラマでも面白かったので読んでみた。『道草』では妻はヒステリー患者にされていたが、ここでは漱石の方が癇癪持ちの頭の病気の夫になっている。漱石文学の実際にあった出来事として興味深い話ばかり。漱石がモデルとして家族のことを小説に書くので子供たちが「書いちゃ嫌だ」と言っていたという。それでもどれどれ今日は雛子のことを書いちゃおうとか。鏡子は『吾輩は猫である』のときから書かれていたので気にしないが。
土曜ドラマ「夏目漱石の妻」| http://www6.nhk.or.jp/drama/pastprog/detail.html?i=3982
猫の話も面白い。そういえば漱石が飼っていた猫の死亡通知(漱石が友人に出したもの)が見つかったというニュースも最近あった。最後は漱石の死体解剖の記述(誰かが書いた読みにくい文章)まで出ていた。デスマスクの話も出ていて、そうかやっぱ偉大な作家なんだと。でもここに書かれている漱石は偏屈な頭の病気な作家を夫に持つ苦労という話、それはほとんど正しいのだと思う。その偏屈さがなければあれだけの文学は生まれてこなかったのだ。(2017/08/09)