シェイクスピアの醍醐味『リチャード二世』
シェイクスピア『リチャード二世』
スティーブン・グリーグラッド『暴君―シェイクスピアの政治学』を読んでいたら、最初に『リチャード二世』が出てきたので読んでみた。エリザベス女王の時代に似たような謀反が企てられて、この劇を企て者を処刑(八つ裂きの刑)したという。エリザベス女王は「私がリチャード二世なのよ」と言ったとか。しかしエリザベス女王は倒されはしなかった。リチャード二世は従兄弟のボリングブルックに王座を追われてロンドン塔に幽閉されるのだが、そこで殺される。王であることへの孤独さを描いた戯曲で、王座を奪った王も謀反が繰り返される。
リチャード二世の孤立した時の独白が哲学的で良い。シィエクスピア劇の大袈裟な言葉はやっぱ戯曲で読んでも素晴らしい。これを誰が演ったらいいのか考えるのも面白い。仲代達矢か。当たり前過ぎ?
「 おれのいるこの牢獄を世界にたとえようと
いろいろ考えをめぐらしてみたが、なにしろ
世界にはおおぜいの人間が住んでいるのに、
ここに生きているものと言えばおれ一人だ、
どうもうまくいかぬ。なんとかならぬものか。
まず、おれの魂を父親とし、おれの頭脳を
その妻とする。この二つから、たえまなく
思想という子孫が生まれては、育っていく、
その思想がこの少世界の住民となるわけだ。」
「 自己満足にふける思想は、おのれにへつらって、
運命の奴隷となったのは自分が最初ではないし、
最後でもないと思う。ちょうど愚かな乞食が、
さらし台にあって、ここにさらされたものは
自分だけじゃないと考えて、恥に隠れた家を
与えるようなものだ。彼はおのれの不幸を、
同じ運命に耐えた他人の背中に背負わせて、
それで心のうちに一種の安心を得るのだ。」
(シェイクスピア , 訳、小田島 雄志 『リチャード2世』)
(2020/12/15)
参考本:スティーブン・グリーグラッド『暴君―シェイクスピアの政治学』