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わがまま大王歌人の後鳥羽院
『後鳥羽院』吉野 朋美 (コレクション日本歌人選)
承久の乱はその本質において、
文藝の問題を武力によつて解決しようとする
無謀な試みだつたのではないか。
わたしにはそんな気がしてならない。 丸谷才一
後鳥羽院 ごとばいん
高倉天皇第四皇子で、源平の争乱のさなかに神器のないまま即位した第八十二代の天皇。譲位後は院政を布(し)き、和歌をはじめ蹴鞠、有職故実(ゆうそくこじつ)研究、水練、馬術、武芸、刀剣の鍛錬とあらゆることに取り組むが、なかでも和歌にのめりこみ、下命した勅撰集『新古今集』ではみずからが編纂の実質的なリーダーとなる。政治と文学、宗教のすべてを手中に収め、国を統(す)べようとした剛毅果敢な帝王。倒幕をめざした承久の乱に敗れて隠岐島に流され、在島十九年ののち同地に薨(こう)じた悲劇の帝王でもある。「ほのぼのと春こそ空に来(き)にけらし天の香具山霞たなびく」に代表されるような、鷹揚で闊達な帝王ぶりの歌をよんだ。
それまで後鳥羽院は塚本邦雄メガネで見ていたので、良さがあまりわからなかった。古典主義のわがまま大王というイメージ。それでも塚本邦雄経由で読んでみたが天皇というブランドなのかなとも思う。プロデュース力は凄いというのも天皇という力だしなあ、と思うのであった。
藤原定家の方が面白かったというのもあるので、後鳥羽院はそれからでいいかな、と。たぶん、定家という巨匠のライバル的存在では面白いのかなとは思う。和歌自体の面白さはよくわからないというのが正直なところ。『新古今集』の編集者としての印象が強い。池澤夏樹みたいな存在か。