天皇家のクーデターとその後の乱世
『双調平家物語〈2〉飛鳥の巻(承前)』橋本治
本朝篇(今昔物語のように、震旦(中国)、本朝(日本)と行者必衰の思想は仏教的な説話なのか?)になって「大化の改新」(最近では中大兄皇子・中臣鎌足らのクーデターとして「乙巳の変」)。
蘇我蝦夷は父馬子の女性を使っての勢力拡大(鼠が穴で掻き回すとか性的に喩える)に疑問を持っていたのだ、母が物部氏の娘で馬子によって一族が滅亡させられた、が女性天皇が誕生すると父の政策を理解する(唐がモデルか?)。
そして自身も直系の子孫に相続させるのだが、三代目になる入鹿は横暴で考えが足りない。そこで蘇我家の分家の不満もあり、反発する者が出てくる。そこに目を付けた中臣鎌子(後の藤原鎌足)が青年皇族の中大兄皇子取り入ってクーデターを起こすのだ。
中臣鎌子に視点が移ると物語が動いて面白くなっていく。最初に取り入った軽皇子はどうしようもない皇子なのだ(女好きで鎌子に妻を与えて自分は若い妻を得る)が、ポロ(鞠打・『光の君へ』でおなじみの)で颯爽と登場する中大兄皇子が理想の国造りに燃える皇族で鎌足は彼に可能性を見出すのだ。そして蘇我氏滅亡のシナリオが出来る。入鹿暗殺の場面の臨場感は映画化してもらいたいほど。入鹿が殺されたあとの蝦夷の悲壮感。さらにその後の皇族同士の殺し合い(軽皇子が孝徳天皇となって中央集権化を図るがうまく行かない)の世の中になって失意のうちに鎌足は世を去っていく。この巻は歴史的にも面白かった。ただ皇族の名前が混乱するので系図が必要だ。最初に系図が掲載されるのだが皇族は複雑に乱れている。