「死者の書」は漫画でも行方(意味)不明
『死者の書(上)(下)』近藤ようこ
折口信夫『死者の書』はなかなか読みきれなくて、漫画ならと読んでみた。折口の古語とオノマトペの不思議な感覚はこの漫画では生かされている。オノマトペは漫画と相性がいいのかもしれない。折口が万葉集からヒントを得て『死者の書』を描いたというのがよくわかった。折口の口承文学へのこだわり、文字化される以前の霊の世界。その神話はエジプト『死者の書』からヒントを得て、律令体制化(古事記~日本書紀の漢文表記)から万葉集(万葉仮名はまだ声紋の記憶を留めていた)から中央集権化以前の神々の世界から古代人を描き出す。
霊的な話でよくわからない結末だった。ただ折口が柳田国男『遠野物語』の影響を受けているのが分かった。郎女が蓮の茎から糸を紡ぎ機織り、滋賀津彦の阿弥陀仏の裸を守る曼荼羅の衣装を寺に奉納するのは、『遠野物語』では盗まれた天人児の衣服を田んぼに蓮華の花を植えて糸を紡いで曼荼羅の綾織が寺に奉納される。滋賀津彦の阿弥陀仏は二上山の霊だから山の神といえないこともない。ラストが違うみたいなので、折口の原作も読んでみなければ。悪霊退治に「あっし、あっし、あっし」と乙女たちが足踏みをするのが面白い。(2020.9.20)