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漱石をもっと読もう

「文豪」をいじる
日本近代文学史上に燦然と輝く大作家・夏目漱石。彼の作品は、ありがたく押し頂いて読まなければいけないのか? それとも──。気鋭の英文学者が『三四郎』『夢十夜』『道草』『明暗』の4作品を取り上げ、B級グルメのように作品を味わうことを提案。漱石作品の新たな魅力に光を当てる。

漱石はけっこう読んでいるがここに取り上げられた『三四郎』『夢十夜』『道草』『明暗』の選書は代表作というのではないが漱石の文学を俯瞰するにはターニングポイントとして注目すべきかも。『道草』『明暗』は最晩年作だがそこで終わりではない。青春小説としての『三四郎』は東京案内小説とも読めるという。恋の指南を美禰子が社会の指南を野々村がする。三四郎は今読んでいる途中。短編連作『夢十夜』は漱石の不安を描いた実験的な小説。芥川の言う「筋のない小説」というか夢を描くのはシュールレアリズムにも繋がっていく。

『道草』は漱石の自伝的小説だが私小説でもない。客観視できる作者の視点がミステリー風だったりゴシック調で読者を楽しませる工夫もなされている。漱石の悪妻と言われた鏡子夫人の『漱石の想い出』は表裏の関係で夫の立場と妻の立場の「明暗」を描く。そしてラストの『明暗』。漱石文学のさらに奥へ。津田の病気は痔だったのか。胃潰瘍かと思っていた。そこだけでも新たな展開があるような。痔小説なんてそうないよ。

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