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(小説)おおかみ少女・マザー編(二・四)

(二・四)地球寒冷化(その1)とクローン人間の致命的欠陥(その2)
 ●止まらぬ地球寒冷化、地球温暖化は終わった(二〇五〇年一月記事)
『また地球上の最低気温の記録が更新された。確実に地球は寒冷化している。最早これは否定しようのない厳然たる事実であり、人類が現在直面する最大限に深刻な現実である。
 時を遡ること一九七〇年代から、人類は地球温暖化という深刻な問題に直面していた筈だった。ところが予想に反して、二〇三〇年突如太陽に異変が生じた。その年の初めより無黒点状態となり、そのままその状態が一年間続いたのである。あたかも地球へのエネルギー供給を拒むかのように。
 そして二十年に渡る今日まで、延々と無黒点状態が続いて来たのである。それに伴って地球上の気温も、当然のことながら低下し続けている。これは人類が二酸化炭素(CO2)の排出量を減らした事による成果などでは勿論なく、太陽から届くエネルギーの量が確実に減少してしまったのだから、回避のしようがない。むしろ地球温暖化が望ましい位ではあるまいか!
 そして昨年の二〇四九年十二月のことである。国連は遂に『地球温暖化は終わった』ことを正式に認め、『今後人類は、地球寒冷化の危機に備えなければならない』と宣言するに至ったのである。』

 次にクローン人間の致命的欠陥について、追加情報が二つある。
 先ず一つ目。
 これは二〇五五年以降にやっと分かったことであるが、クローン人間の子孫もまた、前述の『心臓が停止する』という重大欠陥を持って産まれて来ることが判明した。親がクローン人間であるなら、その子供もまた同じ宿命を背負わねばならない、ということである。それはたとえ非人工的プロセス、即ちごく自然なる性行為と妊娠、出産を経て産まれて来たとしても、同様であった。
 そして二つ目である。
 クローン人間に更にもう一つ、致命的な欠陥の有ることが判明した。それは人類が有していて、クローン人間には欠落している、人類にとっては重要、重大なる機能である。それは何か?一言で言えば、ドーパミンである。ドーパミン!そしてこの欠陥は、生まれる前から既に発症していると言う……。
 では、ドーパミンに関する致命的欠陥とは一体何か?詳しく説明しよう。クローン人間の脳内にも、ドーパミンを分泌するドーパミン神経系(A8からA16の神経細胞)自体は存在する。だがなぜかその中のA10神経細胞のみ、ドーパミンを一切分泌しないと言うのである。つまり実質A10神経細胞が機能しない、更に言うならば存在していないのも同然の状態なのである。
 これは人生にとって余りにも大きな欠落、喪失であるが故に、人類はクローン人間を不憫に思い、同情し気を遣った。具体的にはマスメディア、書物、文献等で、この件に触れることを一切タブーとしたのである。その為クローン人間たちはA10神経細胞の存在を知識としては知っていたが、人類には有るが自分たちには最早不用な過去の遺物である!そういう認識でいたのである。
 また本欠陥に関して、人類の中でこれを知る者は一部の学者、専門家、政府の要人と関係者らに限られ、その他人類の大部分である一般市民には伏せられた。これは無用な混乱と差別、偏見を避ける目的で、あえて秘密にしたのであると言う。その為未だに殆どの人類は、この事実を知らないでいる。

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