映画『ルックバック』「痛み」の感じ方について
『ルックバック』の映画版を観てきました。近くの映画館でやらない、特別興行だからイオンオーナーズカードの割引も使えない、混雑の土曜日という様々なハードルを乗り越えた甲斐あってとてもとても良かったです。
この作品はジャンプ+に読切が掲載されたのですが、かなりの衝撃を受けまして、すぐnoteに感想を書きました。何かこう、黙っていられない、何か書き留めておきたい、そういう気持ちにさせられるんですよね。
もう三年前ですか。そして今回の映画化です。原作に忠実という噂通りではあったのですが、「ただアニメで動くようにした」というだけではありません。映画ならではの創意工夫もたくさんありました。
中でもこの物語で最も美しく、私も大好きな「藤野が京本の家から帰るシーン」ですが、原作では「見開き」で表現していたものを、あえて長回しの遠景で描いてるんですよね。これは、かなり勇気が要る演出だったと思うんですが、映画ならではの叙情感があって良かったと思います。
漫画から入ってもいいし、映画から入ってもいい。そして映画を観た人は漫画を読みたくなり、漫画を読んだ人は映画を観たくなる、そんな素晴らしい仕上がりだったのではないでしょうか。上映時間を1時間に収めたのも素晴らしい。ダレる場面が一つも無かったです。
この作品は、安っぽい言葉ですが、やはり「特別」なんですよね。私が若い頃ならば岡崎京子さんの作品に似た、「痛さ」が心を直撃する内容です。若者が「これは絶対に読んでおけ」と仲間内で話題にするような、そんなタイプの作品です。間違いなく時代を象徴する存在でしょう。
ただ、往々にして、こういう作品は若者と年寄りで受け取り方が違ったりします。私はもう年寄り側なので、「創作にまつわる悪意と困難さ」を強く感じてしまったのですが、若者はもしかすると「創作にまつわる純粋さと希望」を受け取ったかもしれません。
「痛み」の感じ方は年齢と共に変わる。
どちらもこの作品では描かれているので、正解は無いと思うんですよ。でも、若者には若者にしか感じられないものがあるのではないでしょうか。それはもう得難い、尊い経験ですので、未見の人はぜひ映画館へ足を運ぶか、漫画を読んでみることをお勧めします。