模写が好き
好きな文章に出逢うと、書き写さずにはいられない。
元々は文章力向上のためにはじめた模写だけど、これがとても楽しくってくせになる。
本を読みながら、これはと思う文章を見つけては付箋を貼って、あとからノートに書き写す。
さらさらとボールペンを走らせながら目と手でじっくり咀嚼して、どうやったらこんなん書けるんやろうと美しいリズムにうっとりしたり、感嘆したり途方に暮れたり。
ひさしぶりに一木けいさんの「1ミリの後悔もない、はずがない」を読んだ。
特に短編連作の一本め、デビュー作でもある「西国疾走少女」がやっぱりすごく好きだった。
生々しくてどこか不穏な冒頭からタイトル通りの疾走感で一気に物語に引き込まれていく。
過ぎてしまった初恋の、その純度の高さゆえの輝きや儚さ、発達途上にある心身に湧き起こる戸惑いや悦びがキリキリと切なく胸に迫る。
そのみずみずしい文章を、どうしても書き写さずにはいられなくって、何時間もかけてまるっとノートに模写りながら涙が止まらなかった。
痺れる指をさすりながら、結ばれなかった彼らの、しあわせな今を願った。