aonaminozomi

書きながら生きていく/毎週1記事以上更新/だれかのささやかなたのしみになれますように/昭和の終わり関西生まれ/小説はこちら▶︎https://estar.jp/users/393141976

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  • きらくにいきる

    なんだかしんどいなーってときに、読んで一息つけるような、こころが軽くなるようなnoteを目指しています。

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    印象に残った映画やドラマについて紹介しているnoteです。

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最近の記事

ストリップ劇場に体験入店した話

「◯◯ちゃん、最近見いひんなあ」 「ストリップで働いてるの、彼氏にばれたらしいで」 「え〜そうなんやあ」 半裸の女たちの会話を聞くともなしに聞きながら、そのざっくばらんな雰囲気を少し意外に思う。 窓の無い薄暗い更衣室には、香水と煙草のにおいが入り混じり、年季の入った夜の店特有のノスタルジーに満ちていた。 「あれ、体入の子?」 部屋の隅で、おずおずと着替え始めたわたしと友人に気づいたひとりが、あかるい笑顔を向けてきた。 「こんにちは〜」 彼女の人懐っこい声を聞き

    • たくさんのひとと喋った夜はなかなか寝れない

      ここ数日は仕事関係のイベントが続いて、ものすごくたくさんのひととたくさん喋って、とてもたのしくてとても消耗した。 自身の言動を振り返っては上手くやれなかったと逐一落ち込み、けれどもひとと関わることでしか得られないよろこびに度々胸がいっぱいになる。 些細なことで傷つくくせに些細なことでハイになる。 普段はわりかし狭い人間関係のなかで生きているので、たまにのイベントごとのあとにはなかなか平常へ戻ってゆけない。 好きな文章を読む気力も書く気力も残っておらず、それなら大人しく

      • ぺちゃんこに潰れたGUCCIの靴箱

        とある用事に向かうため、早朝の表参道を歩いた。 高級ブランド店のショーウィンドウの前を折れ、人通りのまばらな道を行く。 まだシャッターの降りたセレクトショップやレストランの合間に民家が建っている。 ガレージに艶々の外国車が並ぶ、立派な家だ。どんな人が住んでいるのだろう。 高い塀や柵で囲われたその内に、どんな生活があるのだろう。どの家からも生活の気配は少しも漏れ出てこない。 けれどふと視線を落とした先、家の前のゴミ捨て場にはぺちゃんこに潰れたGUCCIの靴箱が捨てられ

        • よく晴れた、なんの予定もない一日

          なんの予定もない今日は、クローゼットを大々的に整理しようと決めていたのに、あんまりいいお天気だったから、思わずスニーカーを履いて外に出た。 日差しはしっとりやわらかい。どこにも行きたい場所はないけど、気の向くままに歩いてみよう。 このところ気分が落ちこみ気味で、ずるずる怠惰を引きずっていたから、ここらで気持ちを切り替えたかった。 クローゼットを整理しようと思い立ったのもそういうわけで、だけど今は自分の気持ちに素直になろうとひとまずあとまわし。 そう言えばATMに用事が

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        記事

          ははのぐちがつらいというぐち

          そういう電話がくるたんび、もうほんとうに勘弁してくれよと思ってしまう。 もうなにも、背負わせてくれるなと思ってしまう。 それを聞いてあげられるのはわたししかいないのに、うわべだけでも上手に聞いてあげればいいのに、年々母は小さくなるのに、いつか後悔するかもなのに、やさしくできない自分がかなしい。 わたしの平穏は母の電話で唐突に断ち切られ、通話を終えてからも長い時間重たい気持ちを引きずっている。 無視した場合の罪悪感と不安のほうが深刻だから、電話に出ない選択肢はなかった。

          ははのぐちがつらいというぐち

          一生懸命はぜんぶまぶしい/韓国ドラマ「ミセン」

          一生懸命なひとが好きだ。要領よく、深く悩まず、飄々と人生を渡り歩いているようなひとにも正直憧れるけど。 「ミセン」には、一生懸命なひとがたくさん出てくる。 物語の舞台は総合商社で、そこで働く人々の葛藤や奮闘ぶりが描かれているのだけれど、10年前のドラマということもあってか、みんなそんな働き方してたら病気になるで……と心配になるような、パワハラセクハラオンパレードの世界だ。 現実では、たとえば心や身体を壊してしまうような一生懸命さは危険だし、理不尽な環境からは真っ先に逃げ

          一生懸命はぜんぶまぶしい/韓国ドラマ「ミセン」

          なんとなくつまらない毎日を楽しくする手帳

          日々のタスクやスケジュール管理のためではなくて、心の安定を保つための、自分の機嫌を取るための手帳をつくっている。 ずぼらなわたしなので細かいルールは設けていないけれど、ともかく、あとで見返したときに明るい気持ちになることを意識している。 たとえばウィークリーページには、その日嬉しかったこと、たのしかったこと、目標に向けて行動できたことなんかを書き込む。 「〇〇がおいしかった」「いいお天気だった」みたいな、ほんの些細なことしか思い浮かばない日もままあるけれど、 逆に言う

          なんとなくつまらない毎日を楽しくする手帳

          秋のはじめのセンチメンタル

          「切ない」という言葉を知るずっと前から、わたしはそれを知っていた。 両親と、わたしを含む3人の子どもたちが、同じ部屋で眠っていたころの話だ。 それはたいてい休日の朝にやってきた。 カーテンの閉じた薄暗い寝室で、いつもより朝寝坊な家族はまだみんな眠っていて、わたしだけが起きている。 生あたたかい寝息で満ちた静かな部屋の真ん中で、天井や洋服ダンスの溝をぼんやり眺めていると、お腹や胸のあたりがぼやぼやと、こそばゆいようなもどかしいような、なんとも言い難い心地がしてくるのだっ

          秋のはじめのセンチメンタル

          そんなにいいひとじゃないくせに

          いいひとぶるから疲れてしまう。そんなに優しくないくせに、優しくしすぎるからしんどい。 賢くないのに知ったかぶってひとり相撲。夢ばっかり膨らませ、だらしなくYouTubeを眺める午後は量産型の悩みを右手に相談。もっと器用に生きたいくせに、自分の痛みに夢中で視野狭窄。不器用に傷つきながらひと眠りして夢を掻いてる。 理想は低く低く掲げておくのが理想。たぶんぜんぶトリックアート。《まいにちのささいなしあわせ》に蛍光ピンクでハイライトしてきれいごとを積み木して、不恰好に生きていく。

          そんなにいいひとじゃないくせに

          世界で一番素敵な本なんて読まなくていい

          ぶらりと図書館に行く。 ここにある本ぜんぶが読み放題だなんて。 幼いころから、もう何百回目になるかもわからない感慨が、図書館に来るたび条件反射的に胸に湧く。 図書館では、書店とはまた違った本との出会い方をする。 「人気ランキング」も掲示されていないし、カラフルな手書きポップの推奨も、著名人の顔写真入りの帯も巻かれていない。あるいはネットショップのように、誰かのレビューもぶら下がってない。 図書館によっては今月のオススメコーナーなどを設けている場合もあるけれど、基本的

          世界で一番素敵な本なんて読まなくていい

          積み重なっていく付箋の切なさ/0.5の男

          「0.5の男」というドラマを観た。主人公は松田龍平さん演じる引きこもりの中年男性。 両親と暮らす実家を「2.5世帯」に建て替え、妹ファミリーとの同居が始まるところから物語は動き出し、甥や姪との交流を通し、主人公が徐々に社会に復帰していくさまが描かれている。 扱うテーマは中々重いのだけれど、松田龍平さんをはじめとする俳優陣の自然な演技も相まって、空気感は終始ほのぼのとハートフル&ユーモラス。そして気軽に観れる全5話完結。 その中で、けれども強く、心に残ったシーンがあった。

          積み重なっていく付箋の切なさ/0.5の男

          書くために目の前の生活をおざなりにしてはいけない

          ときどき、書くことに夢中になり過ぎて、目の前のことがおろそかになってしまうことがある。 人の目を見て話を聞くこと、自然に触れること、生活をたのしむこと、感情をそのまま味わうこと、それらをあとまわしにして文章を書くことに躍起になるのは、なんだか本末転倒だなあと思う。 もちろん、人それぞれに書く理由があると思うから一概には言えないけれど。 わたしの場合は、単純に書くことがたのしいから、思考を深めたいから、今感じた気持ちを残しておきたい、あるいは昇華したいから。 総じて「よ

          書くために目の前の生活をおざなりにしてはいけない

          家族のネガティブ感情を引き受けない

          割と、トラブルの多い家庭だった。 もっと壮絶な家庭はいくらでもあるだろうし、ひとつのトラブルも抱えていない家庭なんてないだろう。幸せな瞬間だってたくさんあった。 だけど、家の中ではたいてい誰かと誰かが揉めていて、たいてい誰かが病んでいて、とても平和とは言い難い環境だった。 子どもの頃は、どうしてか、そのことに傷ついている自分を家族に悟られたくなくて、布団の中で声を殺して泣くのが日課だった。 多くの場合、わたしは調整役だった。揉めているこちらとあちらの間に入り、こちらを

          家族のネガティブ感情を引き受けない

          仲良くなれそうでなれなかったあの子のこと

          「よかったら連絡先交換しない?」 声をかけてくれたのはあの子からだった。 知り合いのいない土地に越してきたばかりだったわたしは、近所で開催されていた、とある社会人向けの講座に参加していた。 あわよくば気軽に話せる友だちでもできればいいな、というのがその講座に参加した大きな動機でもあったから、期待どおりの展開に、それはもう舞い上がった。 しかも声をかけてくれたのは、「おしゃれで綺麗で、あんな素敵な子と友だちになれたらいいな」と、はじめて教室で見かけたときに心の内で思って

          仲良くなれそうでなれなかったあの子のこと

          上手なレビューは書けないけれど

          ほとんど前情報なしにそれを観て、突風に煽られたみたいに呆然とした心持ちで映画館を後にした。 さて、せっかくだから感想でも書こうかなとnoteを開いて、けれどどこから、何を書けばいいのかわからない。 参考にと、同じ映画を観た方の感想をいくつも読んでみた。 膨大な知識に裏打ちされた鋭い考察、豊かな感性でとらえた俳優陣や演出の魅力、自身の心がどのように動いたか。 多彩な文章で書き綴られたそれらを、読めば読むほど、わたしはもう書く必要ないじゃん、と思っていったんnoteを閉じ

          上手なレビューは書けないけれど

          「映画で世界を変えることはできないけれど、観た人の世界を変えることはできると思う」

          レイトショーに足を運ぶのはいつぶりだろう。 先週、テアトル新宿で期間限定上映されていた、大黒友也監督の短編映画「ゴミ屑と花」「ユウジッ!!」を観てきた。 上映前には監督と俳優陣による舞台挨拶があった。 撮影時は映画館で上映される予定のなかったこの作品が、映画祭で賞を受賞し、満員のお客さんの前で今日こうして上映されるまでのいきさつや作品への想い、感謝の言葉を口にする舞台上の方々の表情はみな晴れやかで、眩しかった。 どちらの作品でも「諦めずに進み続ける人を描いた」と大黒監

          「映画で世界を変えることはできないけれど、観た人の世界を変えることはできると思う」