ぜんぶを持ってるひとはおらん
ほんとうの、ほんとうの悩みは外から見えない。安易にひとに相談できない。
だから、なんもかんもを持っているように見えるあのひとにもきっと、なにかしらの悩みはあるはずで、ひとつの側面だけを眺めて羨ましがるのは浅はかなことだ。
失恋をして、食べることも眠ることもままならないほどげっそり落ち込んでいる友人を、内心羨ましく思ったことがある。
恋人と別れたくらいのことで、そんな風に悩めていいな。励ましの言葉をかけながら、心の一部はどこか冷ややかだった。じゅうぶんに魅力的な彼女はこれ