素敵な言い回しを身にまとって
美容室でなんとなく手に取った雑誌の、ある有名スタイリストのインタビュー記事だった。テーマは大人の女性のTシャツの着こなし方について。
細かい台詞はうろ覚えだけれど、次のようなやりとりがあった。
某スタイリスト
「Tシャツの着こなしって、年齢を重ねるごとに難しくなりますよね」
インタビュアー
「街を歩いている人の着こなしを見て、これは失敗しちゃってるなって感じることあります?」
某スタイリスト
「うーん、というよりは、素敵な着こなし方をしてる人に目が留まりますね」
素敵な言い回しだな、と思った。
本当におしゃれな人は、自身の博識を鼻にかけて誰かの粗探しをするのではなくて、素敵なものを軽やかにキャッチして、素直に素敵だと言えるのだ。
自分なりにおしゃれはするけれど予算には限りがあるし、ファッションについて詳しいわけでもない私は、おしゃれすぎる人に勝手に気後れしてしまう節がある。
ファッション誌を眺めるのが好きなくせに、「いや、ご近所コーデに何十万円のバッグ持ってんねん」みたいな、ひねくれたツッコミがとまらなくなることがある。
そういう感情は、劣等感からくるのだろう。
完全に被害妄想なのだけど、勝手に見下ろされているような気持ちになって、外見とかブランドばかりにこだわるのってどうなんだろう。自信のなさの裏返しかな。みたいな、それこそ自信のなさゆえの負け惜しみを密かにこね始めたりする。
でも、冒頭のインタビュー記事を読んで、なんだかハッと気づかされたような気持ちになった。
おしゃれに間違いなんかはなくて、着たいものを着たいように着ればいい。人のおしゃれを間違っているとかダサいとか、一方的な評価を下すのはそれこそダサい。それが心地良いのなら、自信のなさをファッションでカバーすることだって、もちろん間違ってはいない。
おしゃれに自信は持てなくても、せめて素敵な言い回しを身にまとっていたいなと思った。