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福生は地獄だった【読後感想】村上龍『ユーチューバー』
「福生」と聞いて、『限りなく透明に近いブルー』を思い出さないわけにはいかない。次は、『限りなく~』を読もう。そしたら『コインロッカー・ベイビーズ』『半島を出よ』なんて、しばらく村上龍縛りでもするか。本書は75点にしたんだけど、やはり読ませる作家だなと実感した。とにかくカッコいいんだよな。
点数は先に書いてしまったが、いつものとおり詳細を下記に示す。
2023年
シビレル本
純文学
75点
2.5h
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4作からなるオムニバス。なんなら随筆みたいだった。
『ユーチューバー』書き下ろし
以下3作は文學界・新潮・文藝掲載
『ホテル・サブスクリプション』
『ディスカバリー』
『ユーチューブ』
『ユーチューバー』が面白かった。70分で読み終わる。冒頭でも書いたが、「福生」が出てきた。テンションがあがる。急にクレイジーになって、村上龍感が滲み出た。というか、モデルが村上龍過ぎるww
もう70にもなる、有名作家がユーチューブと言う媒体で淡々と過去を語る話だ。女性遍歴もとい、女性観を語る。筋は、それだけだ。
※名前のない、「わたし」が有名作家にインタビュー形式で聞く形をとっている。
しかし、付箋はそれなりに貼った。いかんせん、強烈なんだよ。格言みたいなんだ。こういう言葉を紡がせたら、村上龍・村上春樹のダブル村上に勝てる作家はいないだろう。僕は、そう思うね。この2人は、日本人作家っぽくなくて、いい。あっ! 伊集院静! 彼もそうだね。ごめん、独り言だ。
なぜわたしはゼレンスキーのことが気になるのでしょうかと彼に聞いた。
「世界の英雄みたいになってるけど、偽物だと思っているからじゃないのかな。でも、わかるよ。他のほとんどの人が知らないけど、実際は違うってことが、頭に来るんだよ。おれが小説を書くのも、そういった怒りなんだよ。もう頭に来て、そのへんのものを全部壊してしまいたくなるけど、壊してもしょうがないから、書くんだよ」
それで、彼女は、1年ちょっと付き合って、ぼくから去っていったんです。ケンは、ケンって彼女はぼくそそう呼んでました。ケンは、これからいろいろな人と出会うよ。それが、ぼくと別れる理由でした。じゃあね、そう言って去っていきました。ぼくはその喪失感で、これまで生きてきたような気がします。その喪失感で、小説を書いて、ずっと後悔しました。別れるんじゃなかったと思って、生きてきた気がします。
書く理由論。村上龍は、「僕」ではなく「ぼく」派なのかな。と、この気持ち悪いですます調ww まあ、インタビューですからね汗
それで、おれたちは、福生に行くことになる。福生は地獄だった。
「俺」も「おれ」派だね。ひとつめの抜粋もそうだったね。と、特徴的な「、」僕も多用するので、なかまだww
おれの親からは、オヤジからだけど毎日ハガキが来た。お前が何を考えているのかわからないとハガキには書いてあった。自分でも何を考えているのわからないんだからしょうがないと思って、この先、自分はどうやって生活していくんだろうと考えて、不安になった。不安にならなかったらバカだよ。20歳になろうとしているのに、自分は何者でもないんだからね。
カタカナもお好きなのね。しかし、今は平和なのだろう。50年前の考え方は今と合わない。この1文でそう思うね。なんならいくつになったら自分が「何者」かわかるのだろうか(朝井リョウの『何者』でも再読するか笑)。
みんなで飲むのは嫌いだった。ただみんなで飲むのが好きな連中はいたよ。今でも、よく覚えているのは、早慶戦のあとで、野球の早慶戦だけど、新宿駅に集まって、みんなで飲んでた。おれは、そういう連中は、死ねばいいと思ってた、いや、殺したいほど憎いとかって意味じゃないんだ。単に、死んだほうがいいいて、そんな感じかな。
ユリコは、男を追い詰めるんだよ。おれのときも、そうだった。もうケンとは会わないからね、みたいなことを、冗談のように言うんだ。それで、本当にしだいに会わなくなっていくんだけど、その距離感の取り方が抜群に上手なんだ。男を本当に好きになったことがないんだと、あとになってそう思ったけど、おれはどこかでそのことがわかっていたんだと思う。ユリコの中には、父親がいたんだよ。父親より、かっこいい男としか付き合おうとしないけど、父親よりかっこいい男は許せないみたいな感じ。引き裂かれていたんだ。
わたしたちは批判力を失っていた。彼の話に酔っていた。
おれは自由なんだと言った彼が忘れられない。確かに、彼は自由だ。会う人は彼の自由に触れる。その感じはごく普通のものだ。決して突出していない。熱くもない。吹き抜ける風のようなものだ。
たまらんね、カッコいいわ。
のこりは20分、30分、20分で読み終わる随筆みたいだったが、また付箋は『ホテル・サブスクリプション』で3枚貼っただけで、淡々と読み進めた。味はとくにない。でも、嫌いではない。いや、正確には言えばつまらないのに、読んじゃう。読まされちゃう。そんな感じだった。さいごに抜粋。
いい曲っていうのは、聞きたいと思う曲じゃなくて、いったん聞いたら止められない曲でしょう。結婚も同じだ思うんだよ、好きな男というのは、いっしょにいたい男じゃなくて、いったんいっしょにいたら別れられない男だと思うんだ。
オリジナリティー云々という話をするようになったら作家は終わりだなと思う。
最後に彼が話してくれたことが印象に残っている。コンプリケーションなんだ、と彼は言った。唯一、この世の中でで、意味がある言葉は、それだけだ、コンプリケーション。
いやあ、たまらんね。いえす、コンプリケーション。コンプリケーションなんだよ。よかったら調べてみてね。すごいな、村上龍。これで〆る。
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